拝啓、愛しのパイロット様

「着いたよ」

 由桔也の住むマンションは、小町のマンションから車で一時間ほどの場所にあった。
 車から降り立つと、かすかに潮の香りがして、初夏の陽気とあいまって、ひときわ強く匂いを感じた。

(由桔也さん、こんな立派なところに住んでいるんだ)

 小町は感心しながら目の前の分譲型のタワーマンションを見上げた。

 小町が住んでいるマンションよりもずっと戸数も多そうで、エントランスに植えられたヤシが南国のリゾートのような雰囲気を醸し出している。
 遠くには深夜にもかかわらず海浜の工場エリアの灯りが見えて、真っ暗な海に淡い光を添える。

 ここに至る道中で、ドラッグストアと二十四時間営業のディスカウントショップに寄ってもらい、一泊分の外泊準備は万端だ。

「こっちだ」
「あ、はい」

 ぼうっと天を見上げていた小町は、由桔也に導かれ、とうとうマンションの中に足を踏み入れた。

 由桔也の部屋は十二階の角部屋、少し広めの2LDK。

 海が一望できる広々としたリビングには、足をのせてくつろげる大きなソファ。おしゃれな大理石のアイランドキッチンには、最新式のキッチン家電が揃えられていた。
 男性がひとりで暮らすにはいささか広すぎる部屋だ。
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