拝啓、愛しのパイロット様
「はい。どうぞ」
「ありがとうございます」
ソファに座るように促されてから、数分後。
由桔也はテーブルに、はちみつを垂らしたホットミルクの入ったマグカップをふたつ置いた。
温かい湯気に誘われ、マグカップに口をつけると、優しい甘みが口いっぱいに広がる。
(温かい)
甘い飲み物を飲んだら、昂っていた神経が徐々に落ち着いてくる。
(ひとまず、明日のことは明日考えよう)
胃の中が満たされて、少しだけ前向きになると、今度は別のことが気にかかるようになる。
「あ、あの。本当に私が泊まっても大丈夫なんでしょうか?」
小町はおそるおそるリビングを見回し、隣でホットミルクを飲んでいた由桔也に尋ねた。
「ダメだったらそもそも連れてきていないだろう?」
「で、でも。いくら人助けとはいえ、彼女さんが怒りませんか?」
玄関にも先ほど借りた洗面台からも、女性の気配は感じられなかったが、男性としての魅力にあふれている由桔也に限って、恋人がいないなんてありえない。
確認の意味で尋ねたつもりだったが、次の瞬間。
「あははっ!」
なぜか由桔也は腹を抱えて大笑いした。
呆気に取られる小町をよそに、ひとしきり笑い終えると、今度こそ質問に答える。
「大丈夫。彼女なんていないよ」
恋人がいないなら、小町の発言は余計なお世話だったわけで。