拝啓、愛しのパイロット様
3.エアーポケット
「好き?」
小町は突然眼前に迫ってきた由桔也の表情を、眉をひそめ訝しげに見つめた。
好きとはどういう意味だろう。
人柄が気に入ったという意味?
それとも、ビジネスパートナーとして最良の相手という意味だろうか?
「言っておくけど、恋愛感情って意味だからな」
由桔也は小町が勘違いしないように、すかさず念を押した。
「プレゼントを買うっていうのも、ふたりで会う口実だ。もちろん、ちゃんと母を祝いたいって気持ちもあるけど」
小町が呑気に構えていた裏で、さまざまな策略が巡らされていたことに、改めて驚く。
ますます意味がわからなくなり、思わず頭を抱えたくなってくる。
一目惚れされるような容姿をしていれば、まだ受け入れられたのかもしれないが、小町は童顔で、卵形の輪郭、鼻も丸く、ほほもふっくらした小動物系のほんわかした顔立ちで、身長も百五十八センチと平均的。
自慢して連れ歩きたいスレンダーな美女というよりは、親しみのあるマスコットキャラクターのような出立ちだ。
そんな小町をかわいいと言ってくれる人もいるけれど、由桔也の隣で並ぶと霞むばかりだ。
「この間知り合ったばかりなのにおかしいです」
「そうかな?俺は自分の直感を信じてるよ」
たまらず反論すると、由桔也は自信満々で、気取ったように口の端をわずかに上げた。
そして、鎖骨まで伸びた小町の黒髪を一房指ですくいとり、恭しく口づけた。
「きっと小町も俺を好きになるよ」
上目遣いで見つめられて、ついたじろぐ。
髪の毛の一本一本に神経が通っているかのように、彼の存在を意識してしまう。
予言めいた言葉には、強い意志を感じた。