拝啓、愛しのパイロット様
「寝室はリビングを出て、左にある扉だから」
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
小町がそう言ってのろのろとソファから立ち上がった。
「おやすみ、小町」
「お、おやすみなさい……」
由桔也は何事もなかったかのように、朗らかに小町を見送った。
やっとの思いで寝室までたどり着いた小町は、はあっと大きな息を吐いた。
(疲れた……)
シャワーを浴びる気力も湧かず、なんとかコンビニで買ったメイク落としシートで顔を拭き、新品のパジャマに着替えてベッドに寝転がる。
シーツからふわりと香る柔軟剤の匂いは、由桔也と同じ香りだ。
ふと、先ほどの言葉を思い出し、思わず枕に顔を埋める。
(好きって本気……?)
うっとりするくらい字が綺麗で、女性なんて選り取り見取りで選び放題なのに、小町が好きだと真顔で言うなんて。
(嘘をつくような人には見えないけれど)
実登里が全幅の信頼を寄せる彼が、小町をからかうためだけにあんな悪質な嘘をつくとは思えない。
(私のどこがいいんだろう)
文房具が好きなだけで、顔もスタイルも普通な小町に惹かれるなんて。
(きっとなにかの間違いなんだ……)
一日の間に一気にいろいろなことがあったせいなのか、目蓋がだんだんと重くなっていく。
神経が高ぶっていたはずなのに、ベッドの上に寝転がって数分もしないうちに小町の意識は深く沈みこんでいった。