拝啓、愛しのパイロット様
さっと着替えを済ませた小町は、そろそろと寝室から廊下に出た。
ゆっくりとリビングの扉を押し開き、部屋の中の様子を窺う。
「おはよう……ございます」
挨拶しつつリビングに足を踏み入れるものの、由桔也の姿はどこにも見当たらない。
その後、家中探し回ったが、どこにもいない。
(どこかに出かけたのかな?)
玄関に置かれていた靴が一足なくなっていたので、もしかしたら外出したのかもしれない。
由桔也がいつ帰ってくるか見当もつかず、ソファに座り、ひたすら待つこと十五分。
玄関の鍵がガチャンと開く音がして、小町はソファから飛び上がった。
「ただいま」
「あ、おかえりなさい……」
リビングに現れた由桔也の顔を見た瞬間、昨日の夜のことが頭を駆け巡り、気まずくなる。
ところが彼は気まずさなど微塵も感じさせない様子でニコリと笑いかけた。
「ごめん、留守にして。ちょっと近くのベーカリーまで行ってきた」
由桔也は左腕に小麦の焼けた香ばしい匂いがする紙袋を抱えていた。