拝啓、愛しのパイロット様
「急いで戻ってきてよかったよ。家を出たあとで、小町が黙って帰っていたらどうしようって心配になったからさ」
「それは――」
お礼も言わずに黙って帰るなんて、無礼な真似はしない。
そう言いかけたところで、パンの匂いに食欲をそそられたお腹がぐうっと鳴る。
「すみません……」
口よりも先に空腹を訴える正直な身体のせいで、気まずい思いをする。
「まずは朝飯だな。今から作るから少し待っててくれるか?」
「由桔也さんが作るんですか?」
「他に誰が作るんだよ」
由桔也は笑いながらベーカリーのロゴが入った紙袋を作業台の上に置き、シャツの袖をまくり、キッチンに立った。
冷蔵庫から、ハムと卵を取り出し、慣れた手つきでフライパンの上にのせ、ハムエッグを作る。
その間に、具材をちぎって、サラダを作る。
朝早くから調達してきたクロワッサンを軽くトースターで焼いたら、美味しそうな匂いが部屋いっぱいに広がる。
小町は時折そわそわとキッチンに視線を送りながら、朝食の完成を待った。