拝啓、愛しのパイロット様
「すみません。泊まらせてもらった上に、ご飯まで作ってもらっちゃって」
「全然。これぐらいなんともない。いつも自炊しているし」
由桔也はスープを口に運びながら、事もなげに言った。
たしかに、キッチンに立つ彼の手つきは、普段から料理を嗜んでいる人のものだった。
「お料理が好きなんですか?」
「料理が好きというか、健康管理の一環かな。パイロットは定期的に『航空身体検査』を受けることが法律で義務付けられている。自分がパイロット業務に耐えうる健康体だと証明する必要があるんだ」
「え!?」
初めて聞く話で、思わず身体を乗り出して聞き入る。
「循環器、消化器、血液検査。普段から気をつけていないと、すぐに引っかかるからな。栄養バランスが偏らないように、できるだけ自炊しているんだ」
「大変なんですね」
会社勤めでも定期的な健康診断が必須だが、パイロットにはより厳密な健康管理が必要なんて知らなかった。
たしかに、離陸した後にパイロットが突然病に倒れてしまったら、一瞬にして乗客に生命の危機が訪れる。