拝啓、愛しのパイロット様
「でも、頼むからひとりで解決しようとしないでくれ」
由桔也は苦しそうに顔を歪ませていた。
「昨日、車の中でずっと手が震えてた。本当は怖かったんだろう?」
小町は由桔也の鋭い観察眼に舌を巻いた。
気を使わせないように気丈に振る舞っていたつもりだったのに、隠しきれていなかったらしい。
「俺は小町の素直な気持ちが聞きたいんだ」
昔の記憶がまざまざと蘇り、小町は大きく目を見開いた。
「強がらなくていい。素直に甘えてくれ」
真剣な眼差しから、小町の身の安全を第一に考えてくれているのが読み取れる。
小町はぎゅっと拳を握りしめた。
(由桔也さんの言う通りなのかもしれない)
誰にも迷惑をかけまいと強がるのは、小町の悪い癖だ。
祖母の家に置き去りにされたあの日から、あまり進歩していないようだ。
大丈夫だと強がっていても、誰かを頼りにしなければ解決できない問題だってある。
「由桔也さんのご迷惑じゃなければ。しばらくお世話になってもいいですか?」
勇気を振り絞ってお願いすると、由桔也は安心したように、ホッと息を吐き出した。
「そうと決まれば、小町のマンションまで必要な荷物を取りに行こう。もちろん俺も一緒に行くから」
「ありがとうございます」
同居が決まり、小町は深々と頭を下げたのだった。