拝啓、愛しのパイロット様
二階には所狭しとショーケースが並べられている。その中には、いくつものボールペンと万年筆が飾られていた。
「この辺りは少し値の張る商品が多いです」
「なるほど」
専用のケースに収められた重厚感たっぷりの意匠の筆記具は、贈答用にはうってつけだ。
安いものでも数千円、高いものだと数十万という値段がつけられている。
「小町は筆記具を買うとき、どういう基準で選ぶんだ?」
由桔也はショーケースをひとつひとつ覗き込みながら尋ねた。
「選ぶ基準は色々あるんですけど、書きやすさとか、持ったときのフィット感とか。あと、見た目はかなり重要です!」
「見た目?」
「仕事をしているときこそ、自分が選んだカッコイイ文房具で気分を上げたいじゃないですか!」
小町はここぞとばかりに力説した。
機能性もたしかに重要だけれど、せっかく買うなら、たとえボールペン一本でも妥協したくないのが本音だ。
「そうか。そうだよな」
由桔也はククッとさもおかしそうに口を引き上げ、目尻を下げて笑った。
(笑われた……)
勢いあまって持論を展開したのが、今になって急に恥ずかしくなる。
「と、とにかく!自分の好きなものを買うのが大事ってことです!」
小町は慌てて自分自身の言葉を取り繕った。