拝啓、愛しのパイロット様
その後は、よきアドバイザー役に徹して、どれにしようか迷う由桔也の傍でひたすら、ショーケースの中の商品について解説する。
「これなんかはペン先に重みがあって、しっかりした書き心地です。由桔也さんは手が大きいので、太めのタイプでもいいかも知れません。あと、こっちのポールペンは今年限定のカラーです。今しか買えませんよ」
「へえ」
由桔也は小町に教えてもらいながら、候補をいくつか選び、店員に試し書きをお願いした。
ベロアが張られたトレーに二種類のボールペンが並べられ、目の前に差し出される。
「書いてみましょう」
「ああ」
ペンを持つよう促すと由桔也はスラスラと試し書き用の紙に今日の日付を軽い調子で書いていった。
(ああ、やっぱり素敵だなあ……)
小町はうっとりしながら、由桔也の書いた字を目で追った。
なぜ、こんなにも彼の字に心惹かれてしまうのか自分でもわからない。
試し書きの字にすら見惚れるなんて、理屈では説明できない。
「これにしようかな」
由桔也が選んだのは、アメリカの老舗筆記具メーカー製のボールペンだった。
ペン先はゴールド、丸みを帯びたスカイブルーのボディは由桔也がいつも見ているであろう青空に似ている。
「せっかくなので名入れもしましょう。愛着が湧きますから!」
「いいね。そうしよう」
店員の案内にしたがって名入れする文字と色を選んだら、最後にお会計を済ませる。
名入れが終わった商品を引き取るのは一週間後だ。