拝啓、愛しのパイロット様
「うわあ!美味しそう!」
小町が注文したのは、手作りのイチゴソースと練乳がこれでもかとのせられたかき氷だ。
熱い日差しの中で待っていたこともあり、ひんやりとした口どけと優しい甘さがうれしい。
「とっても美味しいです!」
「こっちのかき氷も食べるか?」
感激して喜びを伝えると、由桔也が自分の食べていたマンゴーがたっぷりのったかき氷の器を指差した。
「いいんですか?」
「もちろん」
実は先ほどからどんな味がするか気になっていたのだ。
うれしい提案に飛びつくと、由桔也はスプーンでかき氷をひと匙すくい、小町の口もとまで運んだ。
「はい、どうぞ。婚約者さま」
「ど、どうぞって……!」
「照れるなよ。いざっていうときの練習だよ」
由桔也は思わせぶりにニヤリと笑った。
(練習って……)
神城の前以外で婚約者のフリをする必要がないのは、由桔也もわかっているはず。
いざというときが本当に訪れるのかは甚だ疑問だし、ましてやスプーンであーんと食べさせてもらう練習なんて絶対に必要ない。
――そう、つまりわざとだ。
由桔也はまんまとかき氷に釣られた小町がどうするのか、スプーンを差し出し意地悪く見守っている。
いらないと断ることもできたが、彼を意識しているような気がしてなんだか悔しい。
(えいっ!)
小町は心の中で勢いをつけてから、差し出されたスプーンをパクンと咥えた。