拝啓、愛しのパイロット様
「人生一度きりだし、普通の会社勤めじゃ経験できないことをしたいって思っていたんだ。実際、パイロットって面白いよ。肉体的な感覚ではなく、精緻な頭脳と冷静さが求められる難しい職業だ。操縦の大部分がオートパイロットだけど、手動でも離着陸ができるように常日頃から訓練しなくちゃいけないし、気象条件によってフライトの難易度も変わってくる。それがまた面白いんだ」
パイロットについて語る由桔也は自信に満ち溢れていて、自分の職業に誇りを持っているのがよくわかる。
空の上はさぞ居心地がいいのだろう。
彼の見ている世界を覗いてみたいと好奇心が湧いてくるけれど、今の自分の立場ではとても口にできない。
(どうして私が好きなんだろう)
きっと由桔也なら一般的な企業に就職したとしても、それなりに成果を上げ、出世街道をひた走れるに違いない。
頭脳明晰で人目を引く容姿をしていて、男性としても十分魅力的な彼を、周りの女性が放っておくはずがない。
小町を選ばなくても、相応しい人相手はごまんといるわけで。
自分のマンションに住まわせたり、こうして外に連れ出したり、なんのお返しもできないのに好意の数々を向けられると、後ろめたい気持ちになってくる。