拝啓、愛しのパイロット様
「私は両親から見捨てられた子どもなんです。だからですかね。愛情はいつか冷めるものだって思っているんです」
両親は小町が八歳のときに離婚した。
その後、母に引き取られたものの十歳になったとある日、母は小町を祖母の家に置いたきり、そのまま戻ってこなかった。
祖母は優しかったが、実の両親に二度も捨て置かれたという幼少期の原体験は、小町の心に大きな深い影を落とした。
赤の他人同士を結ぶ愛情という名の拙い繋がりに対して猜疑心が芽生えたのだ。
「これでも、何人かお付き合いした人もいたんですよ。でも結局、他に好きな人ができたと言われて上手くいきませんでした」
恋人との別れも小町の考えを裏付けるものになった。
いずれの男性からも『冷めている』と評されたので、小町に原因があったのはあきらかだった。
(私に恋愛は無理なんだ)
子は鎹というけれど、小町の存在は別々の道を歩もうとしている両親を引き留められなかった。
血のつながった我が子をもってしても、別れは避けられないのだ。
両親の離婚以来、自分の存在意義を見失った小町の心の中には大きな空白がある。
本来なら、両親の愛情で満たされているはずのその空間は、いまだにがらんどうのままだ。
どうしたら空白が埋められるのか悩んだり隣の芝生を羨んだこともあったけれど、きっと一生埋まらないのだろうと最近は悟りの境地に達している。