無口な警察官様とのまさかの同居生活についてご報告します〜過保護で甘々で困っているのですが…!〜


買い物のあと、カフェに入って休憩することにした。
オープンテラス席に座ると、周囲の店のショーウィンドウがよく見える。
ケーキ屋さんのショーケースに並ぶホールケーキを眺めていると、ふと昔の記憶がよみがえった。

「……覚えていますか? ふたりの大学合格が決まったとき、母がお祝いのケーキを作ってくれて」
「……ああ、覚えてる。たまたま俺が訪ねてきて、一緒にどうぞって言われたんだよな」

懐かしそうに言う湊さんに、私は苦笑する。

「私、ずっと部屋の隅にいて、ぜんぜん目を合わせませんでしたよね」
「ああ。俺のこと、空気みたいに扱ってたよな」

からかうように言われて、顔が熱くなる。

「でも当時の俺も不愛想で無口だったからな。友達には『付き合ってみると全然怖くない』ってよく言われたよ」

小さく苦笑いすると、湊さんはふっと真面目な顔になった。

「もし俺の性格が違っていたら――俺たちはこんな関係になっていなかったかもしれないな」

どきりとした。

たしかにそうかもしれない。
もう一人のお兄ちゃんのように感じて、恋愛感情を芽生えさせなかったかもしれない。

深い溝があったからこそ、お互いに知らなかった一面を知って、惹かれ合った。
回り道は無駄ではなかったんだ。

「……君に、もっと俺のことを知ってほしい」
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