推しと奏でる、私たちの唄 〜ドS天才歌手の隣は甘くて難しい〜
「変わっても……
“帰ってくる場所”は、残したいなって」
蓮が顔を向ける。
「帰ってくる場所?」
「うん」
夏は一度だけ息を吸った。
「ずっとさ、
みんなで曲やってきたじゃん」
小学生の頃も。
中学生になっても。
ただ集まって、音を出して、笑って。
「だから……」
ほんの少し、言いづらそうに。
「バンド名、つけない?」
蓮と柊が顔を見合わせる。
「バンド名?
そんな立派なもんだったっけ、俺ら」
「俺たち、バンドだったんだね」
ただ蓮と柊は、昔から夏が作る曲が大好きで、夏の曲で遊んでいただけという認識だった。
なので、バンドである自覚さえなかった。
しかし、音楽の才能溢れる夏が求めるものに、ずっと応え続けるには、二人の並大抵でない努力があった。
「そうかそうか……俺ら、バンドマンってやつか!なんかカッコいいな!」
「夏、もうバンド名決まってるんでしょう。何にするの?」
波の音が、強くなる。
「……Shoreline(ショアライン)」
照れたように、夏が言った。