おもひで猫列車へようこそ〜後悔を抱えたあなたにサヨナラを〜
私はスケッチブックを抱きしめたまま、心に刻みつけるように彼を見つめた。

このままずっとこの夜が永遠に続けばいいのにと願わずにはいられない。

夜空からはあの日、二人で見るはずだった無数の星たちが、今なお弧を描くようにして小さな煌めきを放っている。

「……願い事、しようかな」

「俺、もうしたよ」

「そうなの?」

「うん」

私はあわてて目を閉じると願い事をする。

願うことはただひとつ。

またいつか彼と出会えますように。
何十年先でも何百年先でもいい。
また出会って恋をしたい。

願い事を終えて顔を上げれば、彼と目と目が合った。そして桜の樹には季節外れの花が咲き乱れて雪のように花びらが舞い降りてくる。

「桜、また会えるまで元気でな」

「静馬くんもね。あと……」

「ん?」

私は彼の頬に触れる。

「私、静馬くんが好きだよ。大好き」

最後の最後に伝えられた、ありったけの想いにやっぱり涙が零れた。

それでも私は懸命に彼が好きだと言ってくれた笑顔を向ける。

「俺も……桜が大好きだったよ」

そしてふわりと落とされたキスは優しくて涙の味がした。

私にとって愛おしくて幸せで一生、忘れられないキスだった。
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