王子様はお姫様を愛し尽くしたい〜23時のシンデレラ短編〜
英玲奈と麗夜が結婚してから、俺たちは数ヶ月に一度は互いの家を行き来しているのだが、いつからか美弥と英玲奈は二人でランチにも行くようになった。

「じゃあ予約しとくよん。そのお店、国民的王子って呼ばれてる俳優のマカもきたらしいし」

「えっ! あのマカ?!」

「麗夜には負けるけど、カッコいいよね〜。ランチの時、偶然会ったりして」

「わっ、なんだかドキドキしてきた」

「イケメンは目の保養だよね〜」

「うんうん」

(いまなんつった?)

俺はすぐに眉間に皺が寄りそうになる。

なぜなら俺は美弥が国民的俳優のナントカの名前を聞いて、僅かに頬を染めるのを見逃さなかったからだ。


(マカ? コーヒー豆みたいな名前しやがって)

(ふざけんなよ)


俺はすぐに美弥をバックハグする。

「わ、ちょっと……颯っ」

「俺がちょっと席外してる間に浮気すんな」

「えぇっ?! な、何のこと?」

「あのな。俺はすっげー嫉妬深いんだよ! 一瞬でもマカとかコーヒー豆みたいな男のこと考えんなって言ってんの」

ワザとぐっと美弥を覗き込めば、美弥の顔はたちまち真っ赤になる。

「えっと……コーヒー豆って……まさか、芸能人にヤキモチ、やいたの?」

「あったり前だろうが。美弥は俺のことだけ見てればいいんだよ」

「あの颯。英玲奈さん見てるし。その、わかったから……あのとりあえず、離して」

美弥は英玲奈の方をチラチラ見ながら、眉を下げている。

俺だって美弥を困らせたくはないのだが、ヤキモチを妬かずにはいられない。

 
< 2 / 21 >

この作品をシェア

pagetop