夜と最後の夏休み
「はー……。面倒くさい」


 金魚の餌を片付ける。

 今の電話でめちゃくちゃ疲れた。電話をかけてきたのはニャンタカこと根子孝寿だけど、それは同級生の田崎ほのかに頼まれてのことだ。

 ほのかが夜を気にしているのは知っていた。わかるよ。夜、かっこいいから。落ち着いていて優しくて、他の男子みたいにぎゃんぎゃん騒いだりしない。

 私だって夜のことをずっと好きだもの。気づいたのは去年だけど、ずっとずっと、覚えている限り幼稚園のころから、ずっと一緒にいたんだもの。

 けど、だからこそ思う。好きだと言うなら、自分でなんとかして。他人を巻き込まないで。

 ニャンタカだってかわいそうだ。ニャンタカがほのかを好きなのは、たぶんほのか以外のみんな知ってる。ここで言うみんなとは、小崎町小学校、六年生全員(ほのかを除く、夜もちょっと怪しい)と、ニャンタカのお姉さん。

 お姉さんが、ニャンタカの家に近い電柱の陰で、


「ふふ、かわいそ。気づいてもらえないで」


 って大笑いしながら二人を見ているのを私は見た。


 とはいえ、あそこまで言ったんだから、しばらく電話はこないだろう。やめて、ほんとに。


「あーあ」


 ため息を吐いてリビングに戻ろうとすると、今度は玄関でインターホンが鳴った。

「はいはい」
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