ユーレイくんとの恋はあぶない秘密が多すぎる

 ○結歌の部屋

 ベッドに寝せられた嶺が目覚める。※しっかり止血&処置を施してある。


 嶺「……ん」
 結歌「あ、目が覚めた?」

 嶺を覗き込む結歌。警戒の色はあるけれど、どこかほっとした様子。

 嶺「ここは……」
 結歌「あたしの部屋。嶺くん倒れちゃって、やっぱり大丈夫じゃなかったの。……気分はどう?」
 嶺「……」
 結歌「嶺くん?」


 何も言わない嶺に不安がっていると、嶺が急にキラキラした顔になる。

 嶺「これが……結婚ということ!?」
 結歌「違うよ?! なんでそうなるの!?」


 嶺「だって結歌ちゃんの部屋に入れてもらえるなんて……!」
 結歌「単純に家が近かっただけ! さすがにけが人を放っておけないでしょ! ……しかもあたしのせい、だし」


 言葉尻がしぼんでいく。

 結歌「……ごめんなさい。怪我させて。応急処置はしたけど頭打ったんだから、ちゃんと病院行ってね。治療費は払うから」
 嶺「ええ!? 嫌だよ。病院なんて行ったら傷なくなっちゃうじゃないか!」
 結歌「だからなんで残念そうなの!?」


 モノローグ:本当によくわからない。ヤバい人なのは間違いないのに、予想外のことばかりだから……。今も警戒するのが正解か、心配するのが正解か分からなくなるじゃないか。


 結歌「……ていうか、よくあたしの居場所わかったね? もしかして……」
 嶺「うん。GPS。スマホに仕込ませてもらったよ」
 結歌「やっぱり!?」


 慌ててスマホを確認すると、確かに見覚えのないアプリが入っていた。

 嶺「スマホを置いて席外すなんて不用心すぎるよ?」
 結歌「なんで入れた張本人に説教されているの!? っていうか堂々と自供しないでよ。せめて隠し通して欲しいんだけど」
 嶺「だって結歌ちゃんに嘘はつきたくないんだもん」


 シュンと叱られた子犬のような顔になる嶺にぐっと詰まる結歌。


 結歌(……本当に調子が狂う)


 モノローグ:嫌がることはしたくないとか、嘘はつきたくないとか。ぶっ飛んだ言動の中にこちらを気遣う思いやりが見て取れる。だからこそ完全に距離を置く決断ができない。

 はあっと長いため息を吐く。


 結歌「……でも、来てくれてありがとう。おかげで助かったわ」
 嶺「結歌ちゃんを守るのは当然のことだよ。それに傷のことも本当に気にしないで。キミからもらえるものなら全てが宝物だから」


 結歌「……どうして、そんな」
 嶺「……結歌ちゃんは覚えているか分からないけど、オレたちはずっと昔に会っているんだよ。そしてキミは、キミの家族は、オレを救ってくれた恩人なんだ」
 結歌「え?」
 嶺の「オレは親に捨てられたって言っただろう? キミと出会ったのはちょうど捨てられる直前のことだった」
 嶺は少しだけ困ったように笑って語りだす。

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