ユーレイくんとの恋はあぶない秘密が多すぎる
○嶺の回想
モノローグ:オレの母親は昔、芸能界に憧れていたらしい。見目だけはよかったからな。オレもそんな母親の血を引いて、見た目は整っていた。母親はそんなオレの見た目を商売に使おうとしていたらしい。でも……オレには人に見えないモノが見えていた。当時のオレは、それが理解できなかった。だから――
<ビンタを受ける嶺のシーン>
モノローグ:母はオレのことを気持ち悪がった。異常だって。病気だって。だから治してもらわなきゃって、いろんな病院を連れ回した。でもコレは医療で治るものではなかった。
<九州の病院内。嶺の母親が医者に向かって喚き散らしている場面>
モノローグ:そんなときだった。キミと出会ったのは――。
医者と母親が話している間、こっそり抜け出し病院内を歩く嶺。とある病室から歌が聞こえてきて立ち止まる。
モノローグ:陽の光を浴びて自由に歌うキミは、何よりも輝いていた。早く母親のところに戻らなきゃまた叩かれる。そう分かっていても目が離せなかった。それまで虚ろだった心が、初めて跳ねた気がしたんだ。
嶺に気が付く幼い結歌。病室に招かれると、ベッドに結歌の母親がおり、その周りにモヤがついていることに気が付く。
モノローグ:結歌ちゃんの母親は体調不良が続いて入院中だって聞いた。病の原因がモヤだって、すぐに気が付いたよ。だから取らなきゃって思った。この人達にこんなのは似合わないって。黒い汚いものより、きれいなものが似合うって。だからモヤを祓ったんだ。
<結歌の母親が元気になっていくシーン>
モノローグ:体が軽くなったってお礼を言われた。キミにもすごく感謝された。気持ち悪がれることも、遠ざけられることもなく、当たり前のように受け入れてくれたんだ。そのとき言われた言葉は、オレをオレにしてくれた。
幼い結歌『あなたには特別な力があるんだね。お母さんを元気にしてくれてありがとう!』
幼い嶺『……特別なんかじゃない。これは気持ち悪いものだって……。言っちゃいけないものなんだって』
幼い結歌『そうなの? でもあたしはその力、気持ち悪いものだと思わないよ。きっと人に見えないものが見えるのは何か理由がある。……それこそお母さんを助けてくれたみたいに、人とは違う悩みを持っている人を助けることができる力だと思うから』
幼い嶺『人を助けることができる力……?』
幼い結歌『うん! 少なくともあたし達は救われた! だからお礼に歌を届けるね! あたしは歌うことしかできないけど、お礼の気持ちをたくさん込めるわ! あなたが元気になって、幸せになりますようにって!』
モノローグ:結歌ちゃんはそう言って、ワイツベのチャンネルを教えてくれた。それからオレの世界はキミの歌で満たされたのだ――。