ユーレイくんとの恋はあぶない秘密が多すぎる
○回想終了、部屋に戻ってくる
嶺「キミにとっては些細な事かもしれない。でもキミの歌はオレを救ってくれた。元気にしてくれた。だから親に捨てられても平気でいられたんだ」
結歌「……そう、だったんだ」
結歌モノローグ:彼の語る話には覚えがあった。もう顔も声も忘れてしまったけれど、小さいころに病院で仲良くなった男の子。あれが嶺くんだったのだ。
嶺「キミがいない日々なんて考えられない。オレのことが気持ち悪いのなら近づかないし、許可があるまで決して触らないと誓う。嫌がることはしないし、直すよ。だか……らオレを捨てないで。もういきなり希望が消えてしまったあの日々に戻りたくないんだ」
懇願するように手を伸ばす嶺。恋愛というより崇拝されているような感じ。
結歌「……嫌がったら、本当になにもしない?」
恐る恐る尋ねる結歌。過去に助けてもらった恩があると分かり、強い拒否をする気にならなくなった。
結歌「でもあたし、まだあなたのこと警戒してる。だから一定以上近づくのもだめ。もちろん触るのも、写真をとるのも、勝手にこっちのことを調べるのも禁止。本当にできる?」
嶺「キミのためなら何だって。もう消えることがないのなら」
結歌「……」
真意を読み取ろうとじっと嶺を見つめる結歌。
結歌(怪我のこともあるし、モヤのこともあるし……。それに)
モノローグ:自分の歌が誰かを元気にできていたこと。それは正直嬉しかった。ちょっと行きすぎな気はするけれど、嶺くんからは純粋に支えたいという想いが伝わってくる。……信じてみてもいいかもしれない。そう思うくらいには。
結歌「……分かった。嶺くんのいうことが本当か、確かめる時間をつくるよ。離れるかどうかはそこで決めるわ」
嶺「! 本当!?」
結歌「ただし!」
びしっと指を指す。
結歌「変なことをしたらすぐに接近禁止令を出すし、もちろん警察にもいくからね!」
しっかりと頷く嶺。
嶺「分かってる。キミが困ることはしない。だから何が困るのか教えてほしい。手取り足取り、ね」
結歌「そう言うの! そう言う“ねっとり”したのをやめてもらえるかな!?」
嶺「え、どれ?」
結歌「まさか素? 素なの??」
首をひねる嶺に不味ったかもしれないと頭を抱える結歌。けれど仕方がないという表情に。
モノローグ:こうしてあたしとユーレイくんとの曖昧な関係は続くことになったのだった。