ユーレイくんとの恋はあぶない秘密が多すぎる
第4話 まだ認めない
○教室・朝
納得のいかない顔をした結歌のアップ。
奈乃花「うわ~。結歌すごい顔になってるよ。ま、彼氏があんだけ囲まれてキャーキャー言われてたら、そんな顔になるのも分かるけど」
視線を辿るとクラスメイトに囲まれた嶺(イケメンver)が。
奈乃花「でもあのユーレイくんの素顔があんなイケメンだなんて思わなかったなぁ。人が集まるのも仕方がないってものだよ。……まして、その正体があのzero様なんだからさ」
結歌「……それはそうだけど」
モノローグ:昨日の夜、ワイツベに激震が走った。仮面系ライバーをしていたzeroが突如として顔を出したからだ。
その色香のある美貌は瞬く間に界隈を走り抜け、あっという間に知れ渡ることとなった。
なぜそんなことになったかというと――
結歌(顔を隠したまま写真を撮るのをやめて……って言ったらこうなっちゃったんだよね)
モノローグ:今まで嶺くんはあたしの後をつけて写真を撮っていた。それだけでもヤバいのは間違いないのだが……。
結歌(学校ver+黒いフードを被って影からカメラを構えていたなんて!!)
顔を覆って項垂れる。
モノローグ:嶺くんはなんと、前髪を下ろし瓶底眼鏡をした状態で出歩いていたらしい。そしてその手にはカメラ。暗闇でそんな恰好をしてカメラを構えている人がいたら、それはまごうことなき不審者だ。自ら捕まえてくれと言っているようなものだ。
結歌(だからせめて顔をちゃんと出して欲しいと言ったら……)
モノローグ:なにを思ったのか、zeroの顔も公開してしまった……というわけだ。
結歌(なんでこうなったんだろ? あたしはただ、不審者感を減らしたかっただけなのに)
ため息を吐きながら、ちらりと嶺を見る。相変わらず囲まれて黄色い声を浴びている。
結歌「……」
モノローグ:そりゃあ人気の歌い手がクラスにいたらこうなるのは仕方がない。嶺くんは見た目も恰好良くて、人当たりもいいっていうのはあたしも認めているから。でも――
結歌(皆騙されているよ。……あたしもだったけど)
モノローグ:嶺くんは好青年という見た目をしておきながら、執着強めの激やば思考回路人間だということをあたしは知っている。
結歌(何というか、奇行に走らなければすごくいい人なのに……)
モノローグ:けれど嶺くんが奇行に走る理由であるあたしが、「嶺くんはあたし関係じゃなければいい人なんです」なんて言えるわけもない。
結歌「……複雑だ」
もう一度ため息を吐くと、嶺が包囲網を抜け出して近づいてきた。
結歌がびくっと警戒をあらわにすると、距離を保ったままぴたりと止まる。
嶺「おはよ。結歌ちゃん」
結歌「……おはよう」
なんとなく気まずくて目を反らす。
嶺「あ、あのさ、今日は作業部屋、くる?」(汗をたくさん飛ばして様子を伺う感じ)
結歌「…………今日はバイトだから、いかない」
嶺「そっか……。分かった」
しょぼしょぼしながら戻っていく嶺を見た奈乃花が首を傾げる。
奈乃花「ケンカでもしているの?」
結歌「ケンカっていうか……」
なんと言ったものかと迷っていると、奈乃花はぴんときたという顔になる。
奈乃花「なるほど。彼氏が急にちやほやされたからジェラっちゃったんだ?」
結歌「は、はあ!? なんでそうなるの!? 違うよ!」
奈乃花「隠さなくても大丈夫だよ~」
結歌「だから違うって!」
よしよしと頭を撫でる奈乃花に抗議の目を向けるも流されてしまう。
結歌(ち、違うのに~~~!)
モノローグ:これは断じて嫉妬ではない。嶺くんのヤバさに気が付いているのはあたしだけだからひやひやしているだけだ。絶対に違う。