ユーレイくんとの恋はあぶない秘密が多すぎる

 ○時間経過・収録が終わる


 嶺「それでは今日はこの辺りで終わりにします。ばいばーい」


 ぴっと配信を切ると一瞬の静寂。


 嶺「――やっぱり、結歌ちゃんはすごいね。コメント見た? オレの弁明のときよりも同時接続数増えていたし、皆魅了されていたよ」


 穏やかに微笑む嶺に心臓が跳ねる。


 結歌「そう、かな? そうだったら嬉しい。……嶺くんのおかげだよ」
 嶺「オレは何もしていないよ。全部結歌ちゃんが頑張ってきた結果。……オレのチャンネルが荒らされていると聞いて、どうにかしようと動画に出るって決めてくれたのも嬉しかった。ありがとう」
 結歌「そりゃあ嶺くんが困ってたら力になりたいし」



 モノローグ:嶺くんはいろいろとヤバい部分もあるけれど、それでもいつもあたしを助けてくれた。だからピンチなときはあたしだって助けになりたい。そう思っている。


 嶺「……結歌ちゃんらしいね。いつもどんな人に対しても真っ直ぐで……。そんなところも大好きだよ」
 結歌「!」


 ストレートに口説かれて顔が熱くなる。けれど嶺はどこか寂しそうな笑みを浮かべた。


 嶺「……結歌ちゃんのことは大好きで離れたくない。キミはオレにとって、この先も一等大切な人であり続ける。それは間違いない。……けど」

 嶺「オレのせいでキミが傷つけられるのは嫌だ。今回はうまく収まったけど、これから先もそうできるとは限らない。だから――キミが望むのなら、距離を置いた方がいいのかもしれないね」


 結歌「……え」



 言われた言葉に呆然とする結歌。


 結歌(嶺くんが、あたしから離れる?)


 隣に嶺がいないところを想像して心が冷えていく。


 嶺「もちろん影から守り続けるつもりではあるけれど……――結歌ちゃん?」



 思わず嶺の袖口を掴む。


 結歌「……やだ」
 嶺「え?」


 結歌「離れるなんてイヤ」


 モノローグ:……いつの間に嶺くんが傍にいることを当たり前のように感じてしまうようになったのだろう。あれだけ恐ろしくて距離を取っていたはずなのに。……でも


 真っ直ぐに嶺を見つめる。


 結歌「あたし、嶺くんと一緒にいたい」
 嶺「――……結歌ちゃん」


 低い、唸るような声が聞こえた。顔を上げるといつもの穏やかな顔をした嶺ではなく、どこか決意を固めた顔。


 嶺「……オレはさ」


 すっと結歌の頬に手を伸ばす嶺。(ギリギリ触れない場所で止まる)


 嶺「キミが思っているよりもずっと欲深い人間だよ。こうして触れたいし、他の人に触れさせたくない。……本当はキミの歌でさえ独り占めしておきたい。キミがそれを望まないと分かっているのに……」


 ぐっと堪える表情になる嶺。


 嶺「これ以上傍にいることを許されたら、オレ、何をするかわからない。――だから」


 嶺がその言葉の先を言う前に、自分の手を嶺の手に重ねる結歌。


 嶺「っ!」
 結歌「……嶺くんはすごく重たい感情を向けてくるけれど、同時にあたしの意志を尊重し続けてくれる。だからじっくり考えることができた」


 嶺の手を自分の頬へ運ぶ。


 結歌「嶺くんといるとドキドキするのはなんでだろうって、ずっと考えていたの」
 嶺「……それ、って」
 結歌「初めは恐怖でドキドキしているだけだと思っていたの。でも灰谷さんに恐怖を与えられたときはただ怖いだけで、嶺くんといるときのようなドキドキじゃなかった。嶺くんが来てくれて安心したの。……だから気が付いた」


 赤い顔で上目遣いになる結歌。



 結歌「あたし、嶺くんのこと――」




 「好き」と伝えようとすると唇を奪われた。やがて唇が離れるとぎゅっと抱きしめられ至近距離でささやかれる。



 嶺「愛してる」
 結歌「!」
 嶺「ずっとこうしたかった。こうなったらもう止められない。……本当にいいの?」
 結歌「……うん。受け止めてみせる。……だから傍にいて。離れるなんて言わないで――」



 そう言うと、さらにきつく抱きしめられ、キスを送られる。


 結歌(――甘い)


 モノローグ:嶺くんの愛は甘い甘い毒の果実のようだ。少しでもその毒(愛)に触れてしまえば最後。だんだんとその独特な甘さに惹かれてしまう。もう一度食べたいと思ってしまう。その果実から離れることなんて、到底できやしない――。


 モノローグ:あたしはもうとっくに捕まってしまっていたのだ。たぶん、嶺くんと初めてあった日から、ずっと……。


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