私が好きになったのはどっちなの?
 なにを言わんとしているのか予想がついていたが、小さく頷く。
「蓮、教授には黙っていろと言われたが、もう長くはない」
「手は尽くしたのか……って、教授ならいろいろ診てもらったんだろうな」
周りも放っておかないだろう。
「俺と一緒にドイツに行こう。教授もお前が戻ってくれば喜ぶ」
ルカの言葉を聞いて、眠っている花梨ちゃんに目を向ける。
「だが、今はまだ戻れない」
樹を理由にしていたけど本当は違う。
花梨ちゃんが心配なんだ。
彼女と出会っていなかったら、すぐにドイツに行くと決めていただろう。
だが、出会ってしまった。
「花梨が心配?」
ルカに質問され、今度は素直に認める。
「まあね」
彼女の恋がどうなるのか見届けたい。
恋のレッスンをしようと言ったのは俺だ。その責任はちゃんととるつもりだ。
「そんなに大事なら一緒にドイツに連れていけばいいだろ?」
「それはできない。俺の恋人でもないからな」
 彼女が好きなのは樹だ。それに、彼女は大学卒業後に看護学校に入り直し、今年の春、晴れて念願の看護師になったんだ。ドイツで日本の看護師資格は使えないし、彼女の努力が無駄になってしまう。
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