私が好きになったのはどっちなの?
「だから、俺を追ってきたんだな」
 女の心を読むのには長けていたはずなのにな。
 好きになると、その人の気持ちもわからなくなるらしい。
 愛おしくて、愛おしくて、触れずにはいられない。
 花梨ちゃんの髪に手をやって見つめると、彼女も俺の目を見て自分の気持ちを伝えてくる。
「いつの間にか蓮先生が好きになってたの。ううん、違う。私は最初から蓮先生が好きだったの。私が骨折で救急に運ばれた時、手当てしてくれたのは先生でしょう?」
 訂正しなかったが、俺だっていつの間にか気づいていたんだな。
「そうだよ」
 笑顔で認めたら、彼女が心から申し訳なさそうに謝ってくる。
「ずっと樹先生と間違えててごめんなさい。今さら蓮先生が好きって言っても信じてもらえないんじゃないかって思ってた。それどころか、気の多い女だって思われるんじゃないかって……」
 そんなことを考えていたんだな。
「謝ることはないよ。あの頃は俺と樹の見分けなんて父親ですらできなかった」
 身内にも間違われたので、樹と思われようが気にしなかった。
「でも……間違われるのはつらいでしょう?」
 
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