私が好きになったのはどっちなの?
 樹からもメッセージが来たし、今朝釣りに行くつもりで弟には会ったのだろう。
「釣りには静香さんも誘っていたんです。それで、土壇場で理由をつけてふたりになれるよう消えるつもりだったんですけど、樹先生が蓮先生はもう戻って来ないって言うから気が動転しちゃって……」
「いや、今回は一週間で戻って来るよ。ま、諸々調整して、一カ月後くらいに本格的にドイツに行くつもりではいるけど」
「え? 嘘……」
 ポカンとした顔をしている花梨ちゃんを見て悟った。
「樹に担がれたね」
 俺や花梨ちゃんのことを思って、樹はひと肌脱いだのだろう。
「まさか樹先生がそんな嘘をつくなんて……」
「俺が花梨ちゃんのこと好きだって気づいてたみたいだからね」
「隠してたつもりだったんですけど、私の気持ちも樹先生にはダダ漏れだったのかも」
「樹って意外に人を見ているからね」
 フッと笑ってそんな話をしていると、ルームサービスが運ばれてきた。
 食事は美味しかったが、俺も花梨ちゃんもなんだか胸がいっぱいで全部は食べられなかった。
 食事の後は、「疲れたから寝室で休もう」と彼女に声をかけ、寝室に移動する。
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