私が好きになったのはどっちなの?
「馬か。カッコいいな。俺、そろそろ帰らないと。じゃあ」
 樹は彼女の語る印象にまんざらでもない顔をして、俺たちより先に店を後にする。
「あいつストイックだから、次の日のためにいつも十時には寝てるんだ」
 樹がいなくなって少し寂しそうにしている花梨ちゃんにそんな説明をすれば、彼女がボソッと呟く。
「医者の鑑ですね」
「そうだね。それにしても、俺が狼で、樹が馬ね。花梨ちゃん、おもしろいね」
 俺が笑顔で花梨ちゃんに返すと、麻里さんも同調するように頷いた。
「あー、なんだかわかるわ。蓮くんて笑顔で壁を作るタイプだもの」
 麻里さんはうちの家庭の事情も知っているし、俺の性格もわかっている。
「えー、じゃあ僕にも壁作ってるんですか? 蓮先生?」
 酒が入ったせいか子供っぽい口調で尋ねる土方に、小さく笑って返す。
「どうだろうね」
 なぜか俺を見て顔を赤くする彼をジーッと見ていたが、花梨ちゃんが喋らなくなったのでちょっと心配になった。
「花梨ちゃん、急に静かになったけど大丈夫?」
「……はい」
 返事をしたものの、彼女はどこか空を見据えたまま。
「花梨ちゃん……ひょっとして酔った?」
 彼女と飲むのは初めてで、どれくらい飲めるのか知らなかった。
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