私が好きになったのはどっちなの?
 若い女性は渡辺さんの腕で何度も練習したからできたけど、年配の患者さんや若い男性の腕は失敗した。
 若い男性でも血管が細かったりすると、うまくいかないのだ。
「あー、今日もたくさん失敗しました」
 ハーッと溜め息交じりに言えば、渡辺さんが私を慰める。
「女性の患者さんはだいぶできるようになってきたじゃない。もう慣れよ、慣れ」
「……はあ」
 できる人はみんなそういうけど、渡辺さんみたいにできる気がしない。
 お昼を食べ終わると、優希くんの病室に足を運ぶ。
 まだ意識が戻る様子はない。
 私が喋ったら、少しは刺激になるかな?
「優希くんは将来なにになりたい? 私は好きな人追って看護師になったんだけど、まだまだ半人前でね。点滴打つのも苦手なの」
 八歳の男の子にそんなぶっちゃけ話をする。
 なんだろう。言葉が返ってきたわけじゃないけど、悩みを打ち明けて心がすっきりする。
「……私が癒やしてもらってどうするの」
 ボソッと自分にそんなつっこみをすると、優希くんに微笑んだ。
「優希くんが頑張ってるから、私も頑張るね」
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