私が好きになったのはどっちなの?
5,メガネはあまり好きではありません
「あっ、渡辺さん、おはようございます」
 朝早起きして荷物を持って自分の部屋を出てエレベーターに乗ると、中に渡辺さんがいた。
「水森さん、おはよう」
 私を見て彼女がニコッと微笑むが、その表情は若干硬かった。
 彼女も緊張しているのだろう。
 なんせ昨日業務が終わった時に蓮先生に、『渡辺さん、明日予定開いてる?』と聞かれて釣りに誘われたのだから。
 恐らく女が私ひとりでは寂しいだろうという理由で彼女に声をかけたに違いない。
 そう。今日は樹先生たちと釣りに行く日。
 寮の前で先生たちと午前六時に待ち合わせ。
「私、緊張で昨日よく眠れませんでした」
 AIツールで樹先生との会話例を検索したり、髪型だっていろいろ考えた。でも、結局いつもと変わらずひとつ結び。
「私もよ。先生方と釣りなんて初めてだし、休日一緒に出かけるのは初めてなのよ」
 普段落ち着いている渡辺さんが、ちょっと動揺した様子で言う。
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