私が好きになったのはどっちなの?
「ちょっと鉄板にぶつかっただけだし、すぐに冷やしに行ったから大丈夫だよ、きっと」
 蓮先生が落ち込む私を優しく慰める。
「でも……私も気をつけていれば」
 自分を責めずにはいられない。痕が残るような火傷をしていたらどうしよう。
 洗い場の方に目を向ける私の頭を蓮先生がポンポンとする。
「大丈夫だよ……って、花梨ちゃん、手の甲、血が出てるじゃないか」
「え? あっ、ホントだ」
「さっきぶつかった時にトングで切ったのかもしれないな」
「たいしたことないです。痛みもないし、舐めておけば治りますよ」
 ハハッと笑う私に蓮先生は呆れ顔で命じる。
「看護師のセリフとは思えないな。ちょっとそこに座れ」
 いつも穏やかなのに、その顔に笑顔はない。
「え? あっ、はい」
 先生の雰囲気に気圧されながらストンと椅子に座ると、真顔で注意される。
「バイ菌入ったら困る。患者さんを大事にするなら、自分のこともちゃんとケアしないとダメだ」
 その言葉がすごく胸に刺さった。
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