私が好きになったのはどっちなの?
「さあて、なにをお願いしようかな?」
 蓮先生が悪魔な笑みを浮かべながら私を見据えてきたものだから、ゾクッとしてしまう。
「蓮先生、その顔怖いです」
 彫刻のように綺麗な顔をしてるから余計に怖い。
「ちょっと考えておくから、楽しみに待ってて」
「いや、不安しかないですよ」
 企み顔でそう告げる蓮先生にちょっと狼狽えながら言い返すと、樹先生がとんでもない言葉を口にする。
「ふたり、ホント仲がいいな」
「ホント、仲がいいですよ」
 静香さんも激しく同意するものだから、ムキになって否定した。
「いえ、全然仲よくないですから。むしろ天敵です」
 樹先生に私が蓮先生が好きだと誤解されたくない。
 あっ、動揺していたとはいえ、かなり失礼なことを言ってしまっただろうか。
 蓮先生に目を向けると、彼は楽しげに目を光らせた。
「うん。そうだね。花梨ちゃんは俺の天敵」
 場の空気を読んでノッてくれる先生は大人だと思う。
 さっきの静香さんの火傷の時も落ち込む私を慰めてくれた。
 釣り場を後にすると、蓮先生が「ちょっと温泉入っていこう」と車を発進させながら言う。
< 98 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop