転生したら捨てられ公爵夫人になったので放置生活を楽しみます~使えない才女ですので、どうぞお気になさらず~
「グリモワールというのは魔法を出力するための単なる媒介だというのがわたしの持論なのよ。で、魔力がそのエネルギーというようにね。だから魔法陣さえグリモワールにセットしてしまえば理論的にはどんな魔法だって使えるはずなの」
「……はあ」
いきなりそんなことを言われて一瞬ひるんだルイス。
王立学園ではグリモワールは絶対であると教えられる。
最初から覚えている通常魔法以外の魔法は、教授から学んだ魔法陣を理解し自分のグリモワールに書き写すことで増やしていくのが当たり前のことだからだ。
それ以外として、各貴族家に伝わる魔法陣というものがあり、歴史がある古い家系ほど固有の魔法陣を所有している。
その際たるものが、わたしが読んで記憶した禁書庫の魔法体系図だろう。あの本には王国に伝わるほとんどの魔法陣が網羅されていると言っていい。
「しかしそれでは他の者が紙に書いた魔法陣でも自分のグリモワールにセットしてしまえば使えるということになりませんか?」
「うーん。多分無理じゃないかしら?」
それが可能なのだとしたら魔法体系図を書き写してしまえば王家の全員が最強の魔法を使うことができてしまう。しかしそんな話はトリステット殿下から一度も聞いたことがない。
もしも自分大好きなトリステット殿下がそんな魔法をグリモワールの中に取り込んでいたとしたのならきっと自慢しまくり、王都では知らない人は誰もいないというくらい噂になっていただろう。
「もしかしたら、わたしがグリモワールを持っていないから可能なのかもしれないわね」
わたしには読んだ本を完全に記憶するという能力もある。自身が理解できなくとも完コピできるのだ。
ルイスは少し考え込むようにうつむいた後でジッとわたしの目を見た。原理がわからないまでも、もしかしてと、キラリと目が光った。
「では、もしも自分がアリアージュ様の魔法陣を使えば、新しい魔法が使えるということですか?」
「勿論。ルイスは黄色表紙なのよね。土と金属属性なんて嬉しいわ。ぜひやってもらいたいことがあるの」
わたしは待っていましたとルイスの問いに乗っかった。
公爵邸へ帰ってから、わたしはまず公爵領に店を構える商店の代表を呼んだ。
とりあえず次に進めるべきは農業改革だろう。
食べるものさえ困らなければあとはなんとかなるものだと考えて、いくつかの苗と肥料をお願いした。あとは新しい農機具も少々。
まとめるとそれなりの注文となったのだが、質のよいスーツを着こなすロマンスグレーのオビチェという代表は、最初この注文に少々渋い顔をした。
まあそれもそうだろう。最近までほとんど取引をしてこなかった公爵家がいきなりこの大量の注文だ。
まさか踏み倒されるのでは?と考えても仕方がない。
うん。これだけでレトラシカ公爵家の財布の寒さがギリギリなのがわかる。
普通貴族の買い物はツケという信用で成り立っているものだけれど、今回の費用はとりあえずわたしが持つ形でと言い前金を支払ったら、コロッと態度を変えた。
さすがは商売人の変わり身の素早さと頷きつつ、わたしは彼にあるものを手渡した。そして内緒の頼み事をひとつすると「ぜひお任せください」とほくほく顔で買い付けに出ていった。
上手くいくといいな。そんな淡い期待をしながら、わたしは次の考えを実行させるためにまた〝検索〟をする。
レトラシカ公爵領と隣領を挟むルーブ川の形が変わったというのなら、毎回シータリアに雨を降らせるだけでなく、水を溜める池をいくつか用意しておきたい。
この水は農業をする上での生命線になる。
そのための会議は今回もわたしたちの図書室で開かれた。
テーブル一杯に広げた地図を指さして、比較的窪(くぼ)んだ低湿地気味な土地が望ましいと、確認して選んだいくつかの候補地を挙げていく。
そうやって選んだうちのひとつ、もともとルーブ川のあった川岸近くにまでやってくると、わたしはルイスに魔法陣の紙を手渡した。
「というわけで、ルイスにはこの魔法陣を使ってほしいのよ」
「……はあ」
いきなりそんなことを言われて一瞬ひるんだルイス。
王立学園ではグリモワールは絶対であると教えられる。
最初から覚えている通常魔法以外の魔法は、教授から学んだ魔法陣を理解し自分のグリモワールに書き写すことで増やしていくのが当たり前のことだからだ。
それ以外として、各貴族家に伝わる魔法陣というものがあり、歴史がある古い家系ほど固有の魔法陣を所有している。
その際たるものが、わたしが読んで記憶した禁書庫の魔法体系図だろう。あの本には王国に伝わるほとんどの魔法陣が網羅されていると言っていい。
「しかしそれでは他の者が紙に書いた魔法陣でも自分のグリモワールにセットしてしまえば使えるということになりませんか?」
「うーん。多分無理じゃないかしら?」
それが可能なのだとしたら魔法体系図を書き写してしまえば王家の全員が最強の魔法を使うことができてしまう。しかしそんな話はトリステット殿下から一度も聞いたことがない。
もしも自分大好きなトリステット殿下がそんな魔法をグリモワールの中に取り込んでいたとしたのならきっと自慢しまくり、王都では知らない人は誰もいないというくらい噂になっていただろう。
「もしかしたら、わたしがグリモワールを持っていないから可能なのかもしれないわね」
わたしには読んだ本を完全に記憶するという能力もある。自身が理解できなくとも完コピできるのだ。
ルイスは少し考え込むようにうつむいた後でジッとわたしの目を見た。原理がわからないまでも、もしかしてと、キラリと目が光った。
「では、もしも自分がアリアージュ様の魔法陣を使えば、新しい魔法が使えるということですか?」
「勿論。ルイスは黄色表紙なのよね。土と金属属性なんて嬉しいわ。ぜひやってもらいたいことがあるの」
わたしは待っていましたとルイスの問いに乗っかった。
公爵邸へ帰ってから、わたしはまず公爵領に店を構える商店の代表を呼んだ。
とりあえず次に進めるべきは農業改革だろう。
食べるものさえ困らなければあとはなんとかなるものだと考えて、いくつかの苗と肥料をお願いした。あとは新しい農機具も少々。
まとめるとそれなりの注文となったのだが、質のよいスーツを着こなすロマンスグレーのオビチェという代表は、最初この注文に少々渋い顔をした。
まあそれもそうだろう。最近までほとんど取引をしてこなかった公爵家がいきなりこの大量の注文だ。
まさか踏み倒されるのでは?と考えても仕方がない。
うん。これだけでレトラシカ公爵家の財布の寒さがギリギリなのがわかる。
普通貴族の買い物はツケという信用で成り立っているものだけれど、今回の費用はとりあえずわたしが持つ形でと言い前金を支払ったら、コロッと態度を変えた。
さすがは商売人の変わり身の素早さと頷きつつ、わたしは彼にあるものを手渡した。そして内緒の頼み事をひとつすると「ぜひお任せください」とほくほく顔で買い付けに出ていった。
上手くいくといいな。そんな淡い期待をしながら、わたしは次の考えを実行させるためにまた〝検索〟をする。
レトラシカ公爵領と隣領を挟むルーブ川の形が変わったというのなら、毎回シータリアに雨を降らせるだけでなく、水を溜める池をいくつか用意しておきたい。
この水は農業をする上での生命線になる。
そのための会議は今回もわたしたちの図書室で開かれた。
テーブル一杯に広げた地図を指さして、比較的窪(くぼ)んだ低湿地気味な土地が望ましいと、確認して選んだいくつかの候補地を挙げていく。
そうやって選んだうちのひとつ、もともとルーブ川のあった川岸近くにまでやってくると、わたしはルイスに魔法陣の紙を手渡した。
「というわけで、ルイスにはこの魔法陣を使ってほしいのよ」