転生したら捨てられ公爵夫人になったので放置生活を楽しみます~使えない才女ですので、どうぞお気になさらず~
「あっ、君……!」
いきなり屋敷に居つく白髪の男の子を見つけて思わず声をあげた。なぜか今日に限ってはすぐに逃げ出そうとはしないでわたしの方をジッと見ている。
よかった。わたしとシータリアは視線で(急いじゃダメよ)(わかってます)と合図した。
ゆっくりと男の子に近づくと、静かにしゃがんで男の子の目線に顔を合わせる。
「草なんか食べてお腹は壊さなかった? 大丈夫?」
優しく声をかけながらそっと手を出した。
これで逃げるようならばシータリアに捕まえてもらうつもりでいたが、意外にもおとなしい。
だからそのままその子のお腹をポンと触ってみた。ふっくらとしてなんだか気持ちいい。
声をかけられたのが嬉しかったのか、ニカッと笑って自分でもお腹をポンポンと叩き出した。
うん。可愛い。初めて見た時も思ったけれどこの子、ふわふわの綿毛のような白髪に、キラキラと輝くような金眼。その瞳を覆うほど長い睫にぷくぷくのほっぺと、ちょっと見られないほど可愛らしい顔立ちをしている。
「ねえ、この子はどこの家の子かわかるかしら?」
王都の街中、ひとりでうろついていたら人さらいにでも遭いそうなほど整っている。こんな田舎でもまかり間違えば連れ去られてしまうかもしれないと思い、皆に聞いてみたのだが、誰も知らないと首を振った。
「わしらもこの辺りの子どもはたいてい見知っていますが、この子はちょっとわかりません」
「こいつみたいに目立つ子どもは見たことないです」
えええ!? じゃあ、この子はどこから現れてきたの?
まさか、人さらいのところから逃げてきたとか言うんじゃないでしょうね?
シータリアと視線を合わせると、彼女もコクリと頷いた。もしも本当に人さらいが近くにいたとしたらまずいことになる。
やっぱりこの男の子はわたしが保護することにして、ポルトたちには「子どもがいなくなったという家があれば公爵家に来るように」と言って帰らせた。
さてさて、どうしましょうか。
どう見てもこの子は普通の農民の子には見えない。むしろ草を食べていたとは思えない高貴さもある。
特にこの金眼は珍しすぎてカロレステーレ王国の貴族というには、どこの家の特徴もあてはまらない。貴族名鑑を中心に検索しても該当者がひとりとして出てこなかった。
うーん。まさか、外国の貴族の子どもがさらわれて、ここに? でもなあ……。
いくら頭で考えても全くわからないので、いっそと思い本人に聞いてみることにした。
「あのね、僕のお名前は? なまえ、わかるかしら?」
ゆっくりと、一つひとつ区切りながら尋ねても男の子は首を捻ってわたしの顔をジッと見つめてくるだけだ。
話せないのかしら? それとも言葉自体わからない?
「ね、何歳? 歳はわかる?」
続けて尋ねた言葉に、指をいち、に、と折りながら数えだしたところを見ると、どうやら全く言葉がわからないのではないらしい。
男の子は頑張って五つ目まで数えると、わたしに向かい指を五本広げて見せた。
「五歳? 本当に?」
こんなに小さいのに? と驚くわたしの言葉にコクコクと頷いた。
「そうなのね。じゃ、じゃあ僕、どこから来たの? あっち? それともこっち?」
今度は指さしして方向を聞いてみる。そうしたら、ぱっと顔が明るくなり、わたしの手を取りこっちと引いていった。
引かれるままに裏庭の奥についていくと、急に男の子が立ち止まった。そしてわらくずが敷かれたその場所を指さして「ここ、ねんね。ねんね」と言いながら寝転ぶ。
え……。こんなところ、で?
嘘でしょう? と呆気に取られていると、ラズが思い出したようにおずおずと話し出す。
「あの、ちょっと前にこの辺りに白い仔犬が住み着いていて、餌をあげに来たことがあるんです。いつの間にかいなくなっていたな、って思っていたのですが……」
「その犬がこの子に食べ物を運んでいたのでしょうかね。アリアージュ様?」
そういえば、よく見れば水飲み用の器もわらくずの隣に置いてある。
けれども犬ならともかく、こんなところに男の子が住み着いているなんて……。そりゃあ、こんな生活なら草だって食べるし、体もこれほど小さいわけよ。
さすがにこのままここにいさせるわけにはいかない。わたしは男の子の手を取って立たせた。
今まで逃げ回っていたのが嘘のようにおとなしい。
「ここではご飯も食べられないから、一緒にお家の中へ入りましょう」
そう言って抱っこをすると、男の子はきゃっきゃと喜びながらわたしの首元に鼻をすりつけてきた。
いきなり屋敷に居つく白髪の男の子を見つけて思わず声をあげた。なぜか今日に限ってはすぐに逃げ出そうとはしないでわたしの方をジッと見ている。
よかった。わたしとシータリアは視線で(急いじゃダメよ)(わかってます)と合図した。
ゆっくりと男の子に近づくと、静かにしゃがんで男の子の目線に顔を合わせる。
「草なんか食べてお腹は壊さなかった? 大丈夫?」
優しく声をかけながらそっと手を出した。
これで逃げるようならばシータリアに捕まえてもらうつもりでいたが、意外にもおとなしい。
だからそのままその子のお腹をポンと触ってみた。ふっくらとしてなんだか気持ちいい。
声をかけられたのが嬉しかったのか、ニカッと笑って自分でもお腹をポンポンと叩き出した。
うん。可愛い。初めて見た時も思ったけれどこの子、ふわふわの綿毛のような白髪に、キラキラと輝くような金眼。その瞳を覆うほど長い睫にぷくぷくのほっぺと、ちょっと見られないほど可愛らしい顔立ちをしている。
「ねえ、この子はどこの家の子かわかるかしら?」
王都の街中、ひとりでうろついていたら人さらいにでも遭いそうなほど整っている。こんな田舎でもまかり間違えば連れ去られてしまうかもしれないと思い、皆に聞いてみたのだが、誰も知らないと首を振った。
「わしらもこの辺りの子どもはたいてい見知っていますが、この子はちょっとわかりません」
「こいつみたいに目立つ子どもは見たことないです」
えええ!? じゃあ、この子はどこから現れてきたの?
まさか、人さらいのところから逃げてきたとか言うんじゃないでしょうね?
シータリアと視線を合わせると、彼女もコクリと頷いた。もしも本当に人さらいが近くにいたとしたらまずいことになる。
やっぱりこの男の子はわたしが保護することにして、ポルトたちには「子どもがいなくなったという家があれば公爵家に来るように」と言って帰らせた。
さてさて、どうしましょうか。
どう見てもこの子は普通の農民の子には見えない。むしろ草を食べていたとは思えない高貴さもある。
特にこの金眼は珍しすぎてカロレステーレ王国の貴族というには、どこの家の特徴もあてはまらない。貴族名鑑を中心に検索しても該当者がひとりとして出てこなかった。
うーん。まさか、外国の貴族の子どもがさらわれて、ここに? でもなあ……。
いくら頭で考えても全くわからないので、いっそと思い本人に聞いてみることにした。
「あのね、僕のお名前は? なまえ、わかるかしら?」
ゆっくりと、一つひとつ区切りながら尋ねても男の子は首を捻ってわたしの顔をジッと見つめてくるだけだ。
話せないのかしら? それとも言葉自体わからない?
「ね、何歳? 歳はわかる?」
続けて尋ねた言葉に、指をいち、に、と折りながら数えだしたところを見ると、どうやら全く言葉がわからないのではないらしい。
男の子は頑張って五つ目まで数えると、わたしに向かい指を五本広げて見せた。
「五歳? 本当に?」
こんなに小さいのに? と驚くわたしの言葉にコクコクと頷いた。
「そうなのね。じゃ、じゃあ僕、どこから来たの? あっち? それともこっち?」
今度は指さしして方向を聞いてみる。そうしたら、ぱっと顔が明るくなり、わたしの手を取りこっちと引いていった。
引かれるままに裏庭の奥についていくと、急に男の子が立ち止まった。そしてわらくずが敷かれたその場所を指さして「ここ、ねんね。ねんね」と言いながら寝転ぶ。
え……。こんなところ、で?
嘘でしょう? と呆気に取られていると、ラズが思い出したようにおずおずと話し出す。
「あの、ちょっと前にこの辺りに白い仔犬が住み着いていて、餌をあげに来たことがあるんです。いつの間にかいなくなっていたな、って思っていたのですが……」
「その犬がこの子に食べ物を運んでいたのでしょうかね。アリアージュ様?」
そういえば、よく見れば水飲み用の器もわらくずの隣に置いてある。
けれども犬ならともかく、こんなところに男の子が住み着いているなんて……。そりゃあ、こんな生活なら草だって食べるし、体もこれほど小さいわけよ。
さすがにこのままここにいさせるわけにはいかない。わたしは男の子の手を取って立たせた。
今まで逃げ回っていたのが嘘のようにおとなしい。
「ここではご飯も食べられないから、一緒にお家の中へ入りましょう」
そう言って抱っこをすると、男の子はきゃっきゃと喜びながらわたしの首元に鼻をすりつけてきた。