転生したら捨てられ公爵夫人になったので放置生活を楽しみます~使えない才女ですので、どうぞお気になさらず~
「貧乏って言った方が早くありませんか?」

 わたしの言葉に、シータリアは大いに同意し頷いた。
 腐っても公爵家。それなのに足りなくなった人手を増やすことができずに、屋敷の維持もなおざりにされていることからもわかってしまう。

「ホールの飾りも廊下の置物も、台座だけで何もないのはやっぱりおかしいわよね。新しい部屋の家具だって、他の部屋からかき集めたようなものだったわ。何よりこのお屋敷の広さにもかかわらず、あまりに物が少なすぎると思うの」

 もともとそうだったとは思わない。少なくとも屋敷自体は多少古くとも、造りや装飾にはそれなりにお金が掛けられていただろうことがわかる。

「使用人の数も足りなければ、食事も平民の食べるようなものしか出てきませんし」
「そうね。いえ料理自体はいいのよ。別に王宮で毎回出てくるようなこってりしたものよりも食べやすいから」

 そこは少しくらいパメラの差し金もあるだろう。わたしにとってはたいした嫌がらせにはなっていないけれども。
 もともとそう量を食べる方ではないし、前世の記憶を思い出した今となってはバターやクリームこってりの王宮料理よりも田舎の平民料理の方がよほど食べやすい。
 できれば飼料でないちゃんとしたお米もあれば言うことがないのだけれど、それこそ贅沢というものだ。

「私は肉がないのがこたえます。それに野菜の方もお世辞にもあまり育ちが良いとはいえませんしね」
「それなのよねえ」

 どうやら近年このレトラシカ公爵領では不作が続いているようだ。
 公爵家の庭先でも作っているようだが、あまり出来はよろしくない。さらに野菜全般もだが特に主食となる麦が酷いらしい。
 秋に種をまいた麦は冬の麦踏みを経て、春のこの時季には芝生のような青い芽が出ていなければいけないのだが、どうにも様子がおかしかった。

「こちらへ来る道中で見た感じでは、小麦の生育が悪い気がしたわ。麦は連作障害がおこりやすいの。そのあたりが原因なのかしら?」

 それだけではないとは思うけれど、と呟くと、それを待っていたかのように図書室の扉から侍従のルイスが顔を覗かせた。

「一応領内では休耕地を挟んだ三圃制で麦の栽培をおこなっています。が、ここ数年で突然収穫量が半減してしまいました」
「ルイス。いつからそこに?」

 わたしの問いに、ぽりぽりと頭を掻きながら答える。

「ついさっきです。ええと、ラズと入れ違いくらいですね」
「じゃあ、ほとんど最初からね」

 お金がないと言ったことも全部か。

「アリアージュ様、私はこのシーツを替えてきます。それではルイス様、前を失礼」
「ちょっと、シータリア! それは」

 わたしが、と言う前に、ササッとシータリアはルイスの横をすり抜け図書室から出ていってしまった。
 ううう。ひとりで逃げられたわ……。
 面と向かって言ったわけではないが、陰口をたたいたようでさすがに気まずい。
 そうでなくてもルイスは、最初からわたしにあまりいい印象を持っていないような気がする。
 顔をそらしているとルイスが苦笑した。

「はい。でもまあ、アリアージュ様がおっしゃったことは全て正しいです。さすがに気がつきますよね。その、本当に貧乏なんです。このレトラシカ公爵家は」
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