ロマンスに、キス



「こちら、アイスコーヒーになります」



後ろの席から、店員の声が聞こえた。


ほんの一瞬だけ、本当に、反射みたいに振り向いてしまう。
店員は、佐野のほうを見て、さっきと同じように、頬を赤らめていた。



その子は、さっき。
優くんを見て、同じ顔をしていたはずだ。


あぁ、あの店員。見る目、ない。


佐野なんかより、どう考えても、優くんのほうがいいのに。



「朱李。私のこと、本気で考えてくれた?」



後ろから聞こえる、少し強い女の声。



「うん」



短く返す、佐野の声。



「ちゃんと、目見て言ってくれる?」



……めんどくさ。



「あ、これ美味しい」



急に軽くなる空気。
会話の温度が、雑に切り替わる。


店員も。佐野と一緒にいる女も。たぶん、全員。
見る目がない。


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