ロマンスに、キス
「一千華ちゃん、そろそろ出る?」
優くんの声に、はっとする。
あたしはすぐに、顔を上げて笑う。
「うんっ」
佐野の、佐野なんかの、どこがいいの。
ぶっきらぼうで、口も悪くて、性格だって、最悪で。何を考えてるのかもわからないし、空気も読まないし、デリカシーなんて、皆無。
顔だけの男。
――そんな男の、どこがいいの?
今、目の前にいる優くんのほうが、どう見たって、どう考えたって、あたしにぴったりじゃない。
優しくて、ちゃんと話を聞いてくれて、欲しい言葉を、欲しいときにくれる。
かわいいって、何度でも、迷いなく言ってくれる。
あたしは、間違ってない。
「朱李、最近全然遊んでくれなかったじゃん。彼女でもできたのかなって思ったけど、今日会ってくれたし。どういう風の吹き回し?」
「彼女、できてないし。暇だったから来ただけ」
「好きな人もいないの?」
「いない。いいから、早く食えよ」