ロマンスに、キス
――気づいたら、勢いよく立ち上がっていた。
座っている優くんの驚いた顔も、見えないふりして、振り返る。
「……あっれ~、佐野じゃん!」
わざとらしく大きな声を出す。自分でも驚くほど、声が裏返ってない。意識的に、楽しそうに聞こえるようにした。
その声に合わせて、ゆっくりと振り向いた佐野。
視界に映った私を見て、見たこともないくらいの驚きの顔。
ちら、と佐野の向かいに座る女を見る。
この人のどこがいいの?全然、かわいくないじゃない。
佐野も同じ。見る目がない。
「……なんで、」
困惑している佐野をよそに、あたしは問答無用で隣に座った。
意識的に距離を詰める。心臓が、嫌な音を立てているのがわかる。
「偶然だね、佐野。元気してた?」
声は自然に出したつもりだけど、胸の奥はどきどきして、熱くて、どうしても冷静になれない。
佐野はむっとした顔で、片眉を上げながら答える。
「何しに来たの、お前」
そんなの、聞きたいのはこっちだ。
佐野こそ、どうしてここにいるの?なんで、こんな女と一緒にいるの?甘いもの、嫌いだったんじゃなかったの?好きでもないものに付き合うような人間じゃなかったんじゃないの?
――なんでよ、佐野。