ロマンスに、キス
「……あのー、知り合いですか?」
目の前の声に、ふっと現実に引き戻される。
横目で、ちらりと店内を見ると、佐野と一緒にいる女が、申し訳なさそうに笑っている。
「そうなんです~。よく二人で出かけたりするんですけど、佐野、甘いの嫌いですよね?もしかして、知りませんでした?」
はは。
なんて、つまらない会話。
でも、笑って見せる。
……何やってるんだろう、あたし。
どうでもいい女にマウントを取って、心の中では、冷静さを失っている。
佐野のほうなんて、一切見ずに、言ってやる。
「佐野って、顔だけはいいですよね。でも、性格最悪なんで、気を付けたほうがいいですよ?口も悪いし、平気でキスしてくるような男だし」
「え?」
「あ、もしかして佐野がキスするのってあたしにだけだった?ごめんなさい、いらないこと言っちゃって」
佐野の悪口を畳みかけて、自分でも気持ちよくなりかけていたその瞬間、
女がため息をついた。
憐れむような、けれど冷静な目で、あたしを見つめる。
「可哀そうな人。自分も顔しか自信がないから、他人にもそんなこと言うんですよね。私にマウントとるよりもやることあるんじゃないですか?朱李の悪口聞かされたって、何とも思いませんよ。そういうところも好きなので」
……あたしの目を、まっすぐ見て言った。
と思ったら、すぐに佐野のほうに視線を移す。
――なんで、なんで、あたしが……。