ロマンスに、キス



胸の奥が、ぎゅうっと締め付けられる。

惨めだった。

だって、図星だったから。


心のどこかで、女の言うことが、あまりにも正確すぎて痛かった。

顔しか自信がない?

……それは、あたしのことだ。



でも、あたしは知ってる。
佐野のいいところだって、あたしだって知ってる。


悪口ばかりじゃない。

ちゃんと、いっぱい、いいところがあるんだ。
強引だけど、優しいところ。不器用だけど、正直なところ。


――あんたなんかより、あたしのほうが、佐野のことを理解してる。

あたしと一緒にいるほうが、ずっと楽しいって、佐野自身だって言ったんだから。


胸の奥が熱くなる。

惨めだけど、悔しくても、それでもあたしは知ってるんだ。

あたしのほうが、佐野のことを分かってる。



誰よりも、あたしが。



「一千華、もう帰って」



隣から、あきれたような声が落ちてくる。

感情の起伏もない、切り捨てるみたいな言い方。



……ああ。やっぱり。


立ち上がった瞬間、胸の奥が、ずきっと痛んだ。


やっぱり、嫌いだ。

佐野なんか、大嫌い。


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