ロマンスに、キス
「ご、ごめんね。車だったね」
ヘラっと、力の抜けた笑顔を作る。ちゃんと、かわいい角度で。
それを見て、優くんはほっとしたように表情を緩めた。安心した顔。何も問題がなかったことにしたい顔。
優くんは、何も聞かない。
どうしたの、とも。さっきの人、知り合い?とも。なんで泣きそうだったの?とも。
聞いてこない。
……だからといって、あたしのほうから話すことも、ない。
優くん相手には。
だって。
佐野、じゃないから。
佐野じゃないと、意味がない。
佐野じゃない人に話したところで、きっと、優しく慰められるだけで終わる。
それが、欲しいわけじゃない。
佐野だけだから。
私の話を、最後まで聞いてくれたのは。
かわいくないあたしの言葉を、途中で遮らなかったのは。
佐野だけに、わかってほしい。
佐野だけが、あたしのことを知ってくれていればいい。
それでいい。
……そうじゃないと、困る。