ロマンスに、キス
……だめだ。
こいつと話していると、全部の調子が狂う。
間の取り方も、感情の向け方も、あたしが今まで身につけてきた“型”が、通用しない。
関わらない方がいい。
小さく息を吐いて、自分に言い聞かせる。
あたしは、学校では――
誰にだって優しくて、穏やかで、完璧で。
簡単に怒ったりしないし、感情をぶつけたりもしない。
それが、“天使”なんだから。
彼から視線を切り、段ボールをぎゅっと抱え直して歩き出す。
コツ、コツ、と。
靴音だけが、静かな外廊下に落ちていく。
振り返らない。
背中に何かを感じても、絶対に、振り返らない。
正直、イライラはしている。
でも、それを見せたくない。見せる必要なんて、ない。
「あたしは、かわいい。かわいい」
口に出して、繰り返す。
声にして確認しないと、崩れてしまいそうだったから。
深呼吸して、頬の力を抜いて、いつもの表情に戻す。
――あんな男に、ペースを乱されてたまるか。