ロマンスに、キス


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次の日。朝から廊下が、ざわついていた。

耳に入ってくるのは、楽しそうに囁き合う声、噂話、好奇心まみれの視線。



「柏谷さん、付き合ってるらしいよ」

「ビッグカップルだよね」



背中にまとわりつく声の原因は、わかっている。
あの、無神経で勝手なヘッドフォン男。



「結構、お似合いじゃない?」

「そう? かっこいいけど、王子様とはまた違うじゃん。柏谷さんにはもっと王子様っぽい人が似合うと思う」



――そうそう。もっと言って。

その言葉を聞くたびに、胸の奥で小さな虫が這うような嫌悪感が湧き上がる。

あたしに似合うのは、王子様。あんな雑で、勝手な男じゃない。“お似合い”なんて、口にするだけで虫唾が走る。

あたしが誰と並ぶかは、勝手に決めないでほしい。
あたしの世界に無関係な人間が、価値判断を下すなんて、絶対に許せない。

靴箱で上履きを履き替えながら、心の中で小さく毒づく。

ほんと、みんな噂好きだ。
人の恋愛話で盛り上がるしかないの?
暇すぎる。

階段を上がりながら、気にしないふりで息を吐く。
でも、心の中では冷ややかに笑っていた。

――見る目ないね、みんな。

噂している子たちの顔を思い浮かべながら、あたしは心の中で軽くあざ笑う。


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