ロマンスに、キス





……それにしても。
佐野って、いつもこう。軽く見えるのに、何を考えているのか全然読めない。
そのくせ、ひとつ間違うとこちらを惑わせる。

すると、やっとあたしの意図を読み取ったのか、佐野は軽くため息をついた。
しょうがない、とでも言うように、肩をすこし落として――



「放課後、予定は?」



……え。放課後?

慌てて頭の中で整理する。



「…放課後?カラオケ行くんじゃなかった?」



そう返すと、佐野は目を細め、わざとらしい軽口で言う。



「カラオケ?なんで?」

「だってさっき、可愛い女の子に誘われてたよね~」



なんだ、これ。挑発?からかい?
わざとあたしの心を揺さぶろうとしてるの、絶対に。

その瞬間、佐野は小声で舌打ちした。



「思ってねーくせに言うな」



……舌打ちされるおぼえ、私にはない。

やっぱり、佐野ってモテるんだな。
廊下を歩くだけで、視線はぜんぶあいつに向く。
あたしじゃない。どれだけ可愛くいようと努力してきたことなんて、誰も見ちゃいないみたいで、妙に虚しい。

隣に立っているだけで、今まで必死に積み上げてきたものが、全部無意味に思えてくる。
……ムカつくし、当然キスしたことだって許してない。


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