言い出せないまま(She Don't Know Me)
帰宅すると、こんな時間まで毎日何をしているのかと、母のお小言を受け流し、さっさと風呂場へと向かう。
目を閉じると、あの人の姿が見えてくる。
1年生になって間もない頃、高校って案外退屈だな⋯⋯と思いながら、グラウンドを横切り、焼却炉までゴミ捨てに行った日直の日のこと。
私は、風を見た。
そう思わせるだけのものが、あの人にはあった。
一言で言ってしまえば、一目惚れだったのだろう。
あの時はまだ、彼の名前も、学年も、クラスも、何も知らなかった。
知っているのは、陸上部員で、恐らく短距離の選手だということだけ。
精悍で大人びた風貌、真剣な眼差し。
群れることも、媚びることもなく、少し怖いぐらいに、近寄りがたい雰囲気。
あの時から、単調すぎる高校生活で、ひとつだけ楽しみができた。
しかし、
「私、陸上部のマネージャーになります!」
などと言えるようなタイプではない。
目を閉じると、あの人の姿が見えてくる。
1年生になって間もない頃、高校って案外退屈だな⋯⋯と思いながら、グラウンドを横切り、焼却炉までゴミ捨てに行った日直の日のこと。
私は、風を見た。
そう思わせるだけのものが、あの人にはあった。
一言で言ってしまえば、一目惚れだったのだろう。
あの時はまだ、彼の名前も、学年も、クラスも、何も知らなかった。
知っているのは、陸上部員で、恐らく短距離の選手だということだけ。
精悍で大人びた風貌、真剣な眼差し。
群れることも、媚びることもなく、少し怖いぐらいに、近寄りがたい雰囲気。
あの時から、単調すぎる高校生活で、ひとつだけ楽しみができた。
しかし、
「私、陸上部のマネージャーになります!」
などと言えるようなタイプではない。