季節は巡り、隣のあなたはいつでも美しい
 しばらく走って、道の駅で休憩する。


「イチゴ、買っていくか」

「はい!」

「お前、もう食えるようになった?」

「それは無理です……」

「その分、たくさん買って帰ろう、親父たちに土産もいるし。俺にはわかんねえから、適当に選んでくれ」

「わかりました!」


 のんびり澪のあとついてく。

 たまに


「お義父さんはどっちがいいと思いますか?」


 と聞かれるので


「親父は安くて量が多い方。お袋は高くて少ない方」


 と答えておいた。



 そのあと少し走って、昼すぎに餃子屋で昼飯食う。

 美味かったから土産を買って、藤乃と運転を交代して家に向かう。


「澪、寝てていいぞ」

「起きてます」

「花音も寝てるし」

「運転する瑞希さんがかっこよくて好きなので起きてます」

「……好きにしろよ」



 ルームミラーに藤乃が笑いかみ殺してんのが映ってたけど無視して、いつもよりちょっと丁寧に運転して家に向かう。

 家の駐車場に止めた途端、花音が目を覚ました。


「着いた?」

「おう。でもお前は寝てていいだろ。須藤さんたち呼んでくるから」

「んー。ううん、私も行く。お母さんたちにお土産渡すから」

「そうか?」


 澪と花音は土産を持って先に家に向かう。

 俺は藤乃に手伝わせて荷物を運ぶ。


「ただいまー」

「おう、お帰り」


 家に入ったら親父と須藤さんが出迎えてきた。

 二人とも今日は飲んでいないらしい。


「澪が土産の酒とつまみ持ってった」

「見たよ。須藤ともう一晩飲もうか相談してた」


 親父が言うと、藤乃が肩をすくめた。


「明日から仕事だから、親父はいいけど母さんは帰してもらわないと花屋が開けなくて困る」

「桐子さんが帰るなら俺も帰るよ」

「えー……仕方ねえなあ」


 なんにも仕方なくない。

 無視して家に上がる。

 奥から桐子さんと花音が出てきたんで、見送った。

 疲れたから荷ほどきだけしてさっさと風呂に入る。

 宿に比べりゃ狭い風呂だけど、やっぱ家の風呂はいい。


 二階に上がって澪の待つベッドに向かう。

 澪はほとんど寝てたけど、俺がベッドに入ると擦り寄ってきた。


「澪は楽しかった?」

「はい、とても。ありがとうございました」

「お前が楽しかったならいいんだ。また行こう」

「ぜひ。次はもっとイチゴ食べます」

「そっか。がんばれ」

「喉も鍛えます」

「手伝いいる?」

「……えっと、それは……今度で」


 澪はくすくす笑っているけど、目は全然開いてない。

 俺も目を閉じて、澪を抱き寄せる。

 あっという間に眠りに落ちた。

 次はどこに行こうか。

 澪が喜びそうな場所を探しておこう。
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