転生した赤ちゃん皇女さまは家族のために暗躍します~冷酷皇帝一家の天才幼女がどんな事件も解決でしゅ!~
真夜中の大作戦
14.キッチンへ潜入せよ
それからカミルを通じて、シャルウッドとボルツに会う機会が増えていった。
どうやら熱から快復したらそのような計画だったようだ。
(まぁ、兄との触れ合いは大切でしゅからね……っ!)
私は現皇帝レインの第三子であるが、皇位継承は年齢もあってだいぶ遠い。
私自身も皇帝になるつもりは全然ない。
現時点ではシャルウッドとボルツのどちらかが皇帝になるはず。
で、そうなると後妻の子である私と兄ふたりの関係は重要だ。
私を兄と仲良くさせるのも生存戦略である。
今日もまた私たちはカミル抜きで中庭に集まっていた。
外気に触れる中庭は、夏の日差しもあって結構暑い。
兄ふたりはきんきんに冷えた氷入り桃ジュースを飲んでいる。
でも私には氷が早いということで、与えられたのは生温い桃ジュースだ。
ストローからじゅるると吸う。味は美味しいはずだが、ぬるっとしてて美味しい気がしない。
(氷をかみ砕きながら、ジュース飲みたい……ふたりが羨ましいでしゅ……)
「ラミリアは本当に……泣かないね」
「赤ん坊ってそんなに泣くの?」
「そうだと思うんだけど。我慢強いんだね、きっと」
メイドたちは周囲にいるので、事件らしい事件は起きない。
むしろ最初のコーヒーぶちまけが一番の大事件だった。
ちなみにあれ以後、ボルツは水筒を持ってきておらず、私の目の前でコーヒーを飲んでいない。コーヒーは相当貴重だったらしく、補充できていないのだ。
そこでボルツがぐっとシャルウッドに顔を寄せる。
「……兄上、顔色悪くないか?」
「けほっ、うん……」
小さく咳をしたシャルウッドが胸元を押さえる。
みるみるうちにシャルウッドは苦しそうな様子になっていった。
(発作……みたいな感じでしゅね)
すぐにシャルウッドお付きの執事が治癒の魔法を使う。
淡く優しい新緑の治癒の光がシャルウッドの上半身を包み込んだ。
「ふーっ、ありがとう。楽になった」
「でも無理しないほうがいいよ」
「うん、あとちょっと残ってる桃のジュースを飲み切ったら休むよ」
そして桃のジュースを飲み切り、その場は解散になった。
それから何回もシャルウッドの不調にでくわしたのだけれど、症状が出る時もあれば出ない時もある。
同じ頃、ソーニャ経由でシャルウッドの記録を色々と入手して、モナックに読んでもらった。
『にゃんにゃん。シャルウッドの症状が出たのは……五歳の時みたいにゃね。突然、激しい咳と高熱が出たとあるにゃ』
『ふむふむ……。症状は不定期でしゅか?』
『そうみたいにゃね、でも――冬はかなり安定していて、夏と秋は頻繁って書いてあるのにゃ』
『じゃあ今からが辛い時期でしゅね……』
他にあったのは治癒の魔法を使えば症状が緩和すること。
しかし根治はできず、事前に症状を抑制するようなこともできない。
つまり症状が出たら都度、対処療法しかできないということだ。
『症状も高熱、咳、腹痛……などなど。致命的な症状はないらしいにゃ。軽度の場合は発疹やかゆみ程度とかにゃん』
『ふぅーむ……』
『情報はこれくらいにゃねー。名医でも帝国上位の魔法使いでも対処療法しか手立てがないのにゃ。ラミリアちゃんにいい考えがあるのかにゃん?』
『ううーん、もう少し待ってでしゅ』
実のところ、シャルウッドとボルツに会う中で疑わしいと思う事柄はできてきていた。
でもまだ仮説の仮説段階だ。
『色々と調べなきゃでしゅ……!』
私はさらに日数をかけて調査を重ねた。
シャルウッドと会う機会も増えるようにしたり。
(これは兄と会う時にめちゃくちゃ私が喜べばいいでしゅ)
あとは最近、症状が出た時間帯の記録をソーニャから手に入れたり。
夜中にもこそーり出かけて、情報を仕入れる。
この頃にはかなり自由に区画内を移動できるようになっていた。
「ばぶ」
壁に貼りついたり、天井にぶら下がったり。
意外と人間は上や下に目線が行かないものなのだ。
で、今夜は居住区内のキッチンにきていた。
鍵は魔法でこそーっと開けてと……。真っ暗なキッチン内をぺたぺたと歩く。
後ろについてきているモナックはらんらんと目を輝かせていた。
『もしかして、ついに盗み食いかにゃん!?』
『んなわけないでしゅ。そもそも食料の入っている棚、保管庫は今空でしゅよ』
『にゃーんだ。じゃあ、どうしてキッチンに忍び込むにゃん』
すすすっと私たちは暗闇、静寂のキッチンを進む。
ソーニャの言葉を私は思い出していた。
『どの区画でも調理器具、調味料、食料の保管は厳重です。毒鑑定の魔法や毒見役もありますし。それゆえ毒などを仕込むのは不可能です』
シャルウッドが日常で口にする全て、衣服や寝具も魔法による検査がある。
それはもちろん、レインがシャルウッドのために徹底的な調査をしたからに他ならない。
今も防犯上の理由から食料品の管理は厳重だ。
夜、毒を仕込まれることを危惧して……調味料、食料庫などは別区画にまとめて保管されている。だから本当に無人のキッチンには食べられるものがない。
でも私の目的は食料品ではない……棚をいくつか開けて、目当ての物を見つける。シャルウッド向けのレシピだ。
これもソーニャの事前調査通り。本当にありがたい、
しゅたっとお目当てのものを抱えて、私は床に降り立った。
『紙の束にゃん』
『うん、レシピ集でしゅよ』
『食べ物がないのに、レシピを知ってどうするにゃ』
『まぁ、ちょっと待つでしゅ……明かりが欲しいでしゅね』
そこで私は目に魔力を集めた。
少しして、私の瞳がぺかーっと光る。
これは新しく覚えた【眼球発光】の魔法だ。効果は目が光る、以上。
光の群れの魔法の変な応用魔法だ。どの世界にも変な人はいる。
モナックに言わせると結構センスある魔法らしいが……。
とりあえず暗い時には懐中電灯の代わりで便利である。
(他人から見たビジュアルは考えちゃ駄目でしゅね)
目から放たれる光を頼りに、私はレシピを確認していく。
今の夏のレシピ、それに秋のレシピ。ふむふむ、予想通りだ。
あとは春と冬のレシピも私の仮説を補強してくれた。
『もういいのにゃ? 一部しか読んでないにゃ』
『大丈夫。多分――私の思っている通りだと思うでしゅ』
『にゃー? シャルウッドの症状には何か原因があるのにゃ?』
ふにっと首を傾げるモナック。そんな可愛いモナックを見つめながら私は頷いた。
『シャルウッドの症状はアレルギーが原因でしゅ』
『にゃう……』
モナックが頭を下げながらごしごしと顔を洗う。
『マジでまぶしいのにゃ、それ』
どうやら熱から快復したらそのような計画だったようだ。
(まぁ、兄との触れ合いは大切でしゅからね……っ!)
私は現皇帝レインの第三子であるが、皇位継承は年齢もあってだいぶ遠い。
私自身も皇帝になるつもりは全然ない。
現時点ではシャルウッドとボルツのどちらかが皇帝になるはず。
で、そうなると後妻の子である私と兄ふたりの関係は重要だ。
私を兄と仲良くさせるのも生存戦略である。
今日もまた私たちはカミル抜きで中庭に集まっていた。
外気に触れる中庭は、夏の日差しもあって結構暑い。
兄ふたりはきんきんに冷えた氷入り桃ジュースを飲んでいる。
でも私には氷が早いということで、与えられたのは生温い桃ジュースだ。
ストローからじゅるると吸う。味は美味しいはずだが、ぬるっとしてて美味しい気がしない。
(氷をかみ砕きながら、ジュース飲みたい……ふたりが羨ましいでしゅ……)
「ラミリアは本当に……泣かないね」
「赤ん坊ってそんなに泣くの?」
「そうだと思うんだけど。我慢強いんだね、きっと」
メイドたちは周囲にいるので、事件らしい事件は起きない。
むしろ最初のコーヒーぶちまけが一番の大事件だった。
ちなみにあれ以後、ボルツは水筒を持ってきておらず、私の目の前でコーヒーを飲んでいない。コーヒーは相当貴重だったらしく、補充できていないのだ。
そこでボルツがぐっとシャルウッドに顔を寄せる。
「……兄上、顔色悪くないか?」
「けほっ、うん……」
小さく咳をしたシャルウッドが胸元を押さえる。
みるみるうちにシャルウッドは苦しそうな様子になっていった。
(発作……みたいな感じでしゅね)
すぐにシャルウッドお付きの執事が治癒の魔法を使う。
淡く優しい新緑の治癒の光がシャルウッドの上半身を包み込んだ。
「ふーっ、ありがとう。楽になった」
「でも無理しないほうがいいよ」
「うん、あとちょっと残ってる桃のジュースを飲み切ったら休むよ」
そして桃のジュースを飲み切り、その場は解散になった。
それから何回もシャルウッドの不調にでくわしたのだけれど、症状が出る時もあれば出ない時もある。
同じ頃、ソーニャ経由でシャルウッドの記録を色々と入手して、モナックに読んでもらった。
『にゃんにゃん。シャルウッドの症状が出たのは……五歳の時みたいにゃね。突然、激しい咳と高熱が出たとあるにゃ』
『ふむふむ……。症状は不定期でしゅか?』
『そうみたいにゃね、でも――冬はかなり安定していて、夏と秋は頻繁って書いてあるのにゃ』
『じゃあ今からが辛い時期でしゅね……』
他にあったのは治癒の魔法を使えば症状が緩和すること。
しかし根治はできず、事前に症状を抑制するようなこともできない。
つまり症状が出たら都度、対処療法しかできないということだ。
『症状も高熱、咳、腹痛……などなど。致命的な症状はないらしいにゃ。軽度の場合は発疹やかゆみ程度とかにゃん』
『ふぅーむ……』
『情報はこれくらいにゃねー。名医でも帝国上位の魔法使いでも対処療法しか手立てがないのにゃ。ラミリアちゃんにいい考えがあるのかにゃん?』
『ううーん、もう少し待ってでしゅ』
実のところ、シャルウッドとボルツに会う中で疑わしいと思う事柄はできてきていた。
でもまだ仮説の仮説段階だ。
『色々と調べなきゃでしゅ……!』
私はさらに日数をかけて調査を重ねた。
シャルウッドと会う機会も増えるようにしたり。
(これは兄と会う時にめちゃくちゃ私が喜べばいいでしゅ)
あとは最近、症状が出た時間帯の記録をソーニャから手に入れたり。
夜中にもこそーり出かけて、情報を仕入れる。
この頃にはかなり自由に区画内を移動できるようになっていた。
「ばぶ」
壁に貼りついたり、天井にぶら下がったり。
意外と人間は上や下に目線が行かないものなのだ。
で、今夜は居住区内のキッチンにきていた。
鍵は魔法でこそーっと開けてと……。真っ暗なキッチン内をぺたぺたと歩く。
後ろについてきているモナックはらんらんと目を輝かせていた。
『もしかして、ついに盗み食いかにゃん!?』
『んなわけないでしゅ。そもそも食料の入っている棚、保管庫は今空でしゅよ』
『にゃーんだ。じゃあ、どうしてキッチンに忍び込むにゃん』
すすすっと私たちは暗闇、静寂のキッチンを進む。
ソーニャの言葉を私は思い出していた。
『どの区画でも調理器具、調味料、食料の保管は厳重です。毒鑑定の魔法や毒見役もありますし。それゆえ毒などを仕込むのは不可能です』
シャルウッドが日常で口にする全て、衣服や寝具も魔法による検査がある。
それはもちろん、レインがシャルウッドのために徹底的な調査をしたからに他ならない。
今も防犯上の理由から食料品の管理は厳重だ。
夜、毒を仕込まれることを危惧して……調味料、食料庫などは別区画にまとめて保管されている。だから本当に無人のキッチンには食べられるものがない。
でも私の目的は食料品ではない……棚をいくつか開けて、目当ての物を見つける。シャルウッド向けのレシピだ。
これもソーニャの事前調査通り。本当にありがたい、
しゅたっとお目当てのものを抱えて、私は床に降り立った。
『紙の束にゃん』
『うん、レシピ集でしゅよ』
『食べ物がないのに、レシピを知ってどうするにゃ』
『まぁ、ちょっと待つでしゅ……明かりが欲しいでしゅね』
そこで私は目に魔力を集めた。
少しして、私の瞳がぺかーっと光る。
これは新しく覚えた【眼球発光】の魔法だ。効果は目が光る、以上。
光の群れの魔法の変な応用魔法だ。どの世界にも変な人はいる。
モナックに言わせると結構センスある魔法らしいが……。
とりあえず暗い時には懐中電灯の代わりで便利である。
(他人から見たビジュアルは考えちゃ駄目でしゅね)
目から放たれる光を頼りに、私はレシピを確認していく。
今の夏のレシピ、それに秋のレシピ。ふむふむ、予想通りだ。
あとは春と冬のレシピも私の仮説を補強してくれた。
『もういいのにゃ? 一部しか読んでないにゃ』
『大丈夫。多分――私の思っている通りだと思うでしゅ』
『にゃー? シャルウッドの症状には何か原因があるのにゃ?』
ふにっと首を傾げるモナック。そんな可愛いモナックを見つめながら私は頷いた。
『シャルウッドの症状はアレルギーが原因でしゅ』
『にゃう……』
モナックが頭を下げながらごしごしと顔を洗う。
『マジでまぶしいのにゃ、それ』