運命の恋は、スマホの外にありました
「あ、華恋ちゃん。ほら見て」

 龍介さんが斜め上を指差す。見上げると、そこには建物の影に切り取られたオレンジ色の夕焼け空があった。

「わあ、綺麗」

 今日は雲ひとつない快晴だったから、特に美しい。上空は紫がかった青空、下方に燃えるような(だいだい)色の輝き。自然が織り成すグラデーションに目を奪われる。
 こんな気持ちで空を見上げるのは、いつぶりだろう。
 そう思ってしまうほど、最近の私はずっと(スマホ)ばっかり見ていたんだな。

「華恋ちゃん」

 名前を呼ばれて隣を見ると、オレンジの夕陽に照らされた龍介さんが微笑んだ。

「それ、飲まないの?」

「えっ?」

 私の傍らにあるペットボトルを見遣る龍介さん。そこで私は、駅前で買ったメロンクリームソーダを飲んでいないことに気付いた。
 龍介さんがニコニコして言う。

「夕焼け空を見ながら飲むメロンクリームソーダは、格別だよ? 俺はもう飲み終わっちゃったけどね」

「そういえば飲んでなかったです。龍介さんが飲むのを見ているだけで、お腹いっぱいだったので」

「どういう意味だよ」

 二人で笑い合ってから、私はペットボトルのキャップを開けた。
 瞬間、中からパステルグリーンの飲料が勢い良く噴き出す。

「きゃあぁ!?」

「うわっ、大丈夫?」

 私はパニックに陥りながらも、すぐにペットボトルを持つ手を身体から離した。けれど、デニムにボタボタと掛かってしまう。

「華恋ちゃん。これ、使って」

 龍介さんがハンカチを差し出してくれた。

「いえいえ、綺麗なハンカチを汚すわけにはいきません。ウェットティッシュを持ってるので、大丈夫です」

 慌てて申し出を断り、ペットボトルを地面に置く。濡れてない方の手で、バッグのポケットからウェットティッシュを取り出した。

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