月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ


「島の外では国と国との争いが絶えないし、人間というのは一人ひとりに人生の課題があるだろう。だが、ここでは定期的に民衆が集まって、なにもかもを忘れて、思い思いに踊る。これこそ、人間のあるべき姿だとは思わないか」


「そうですね」


 父親の阿村よりずっと長く生きている判大狗の言葉は、桐杏に重みを感じさせる。


「判大狗さん、私、思うんです。私にこの能力があるのは、音楽を愛する人たちばかりなこの島で生まれたからじゃないか、って」


 身分制度があるこの国で、フルハ島の島民たちが豊かに暮らせるというのは夢のまた夢だった。それでも、島民たちは貧しくとも、幸せに満ちあふれている。桐杏はいつまでもこんな日々が続けばよいと思っていた。
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