月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ


 桐杏が夜伽者に選ばれたことは、すぐさま島民に知れ渡る。桐杏の家の前に、島じゅうの人が集まった。だれもかれも、悲しみの涙を流している。


「桐杏! 行かないで! うわあああん!」


 その中でだれよりも泣き叫んだのは訓出だ。訓出は残酷な運命に号泣する。


「桐杏のことは、俺が必ず助けるよ」


 ひっく、ひっくと息をつまらせながら、そう宣言した。


「ううん、訓出、いいの。私を助けることばかり考えるような生き方を、あなたにはしてほしくない。私のことはもう忘れて」


 桐杏は訓出の手を包み込むように握り、気丈に振る舞う。


「……いや、待てよ。今、ここで戦えば、あいつらに勝てるんじゃないか?」


 その時、訓出がひらめいたように言った。
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