月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
この世界の人間には、百万人にひとりの確率で、特殊な能力を持つ者がいる。そのような人間を高等能力者と呼ぶ。ある者は雨を降らし、またある者は雷を鳴らすことができる。けれども、桐杏には過去の書物のどこにも記されていない、ふしぎな能力があった。そして、高等能力者は身分の高い人間ばかりで、桐杏のような貧民にその能力があることはありえないとされている。桐杏はこの島で初めて生まれた高等能力者でもあった。
「桐杏!」
桐杏が食事を終えてひと休みしていると、ひとりの青年がやって来る。名前は訓出。桐杏の幼なじみだ。年齢は桐杏より一歳下の十四歳で、ひと重まぶたと鼻翼の広がった鼻が特徴的である。兄弟姉妹は妹がひとりだけの桐杏には、訓出は弟のような存在でもあった。ひとりっ子の訓出もまた、桐杏を姉のように慕っている。